遊びの隠された重要な役目
今回の研究でハエのような昆虫にも運動遊びが存在することが判明しました。
この結果は遊びは無脊椎動物・脊椎動物を問わず、幅広い種で見られる共通の現象であることを示しています。
また、これほど幅広い種に遊びがみられるという事実は遊びには何らかの重要な効果がある可能性を示します。
特に多くの遊びが動物たちの幼い時期にみられるという事実は見過ごせません。
そのため近年では「遊び」は危機的状況のシミュレートや感覚の訓練のために行われていると考えられるようになってきました。
たとえば犬、猫などにみられる「追いかけっこ」や「じゃれ合い」は天敵からの逃走や獲物の追跡を、安全な環境で再現することを可能にします。
同様に「けんかごっこ」もライバルとなる相手との争いを再現したものとなっています。
危機的状況や争いを繰り返しシミュレートすることで、遊びは間接的に動物たちの生存能力を底上げしていたのです。
また今回のような回転台に乗る遊びにも、有益な効果があると考えられています。
自分が経験したことのない動きを安全に体験することで、私たちは自らの内部感覚の予測を正しく行えるようになるからです。
ジェットコースターに乗ったことがある人は乗ったことがない人に比べて、高い場所から落下する感覚を知っています。
現在の文明社会でジェットコースターに乗った経験が生存可能性にかかわることはほとんどないのは事実です。
しかし厳しい自然環境では、自分が回っている、あるいは、落ちているという状況を瞬間的に認識できるかが生存に直結することもあります。
またこれまで行われてきた研究によって、人間は遊びを行っている時に最も創造的になることが判明しています。
安全と危機という2つの要素が組み合わさった遊びには、脳を独特な状態にする不思議な作用があるのでしょう。
研究者たちは今後、ハエの神経細胞を観察し、遊びを推進する脳回路の存在を確かめたいと述べています。
もし遊びを司る脳回路を自由に操作できる薬が開発されれば、創造力のブーストや認知症患者のリハビリなど幅広い用途に利用できるでしょう。