抗酸化剤を使うと孤独の悪影響を緩和できる
![孤独の苦しみを和らげるには抗酸化物質を投与するといい](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2023/10/9f91ab686098191795f7cd81c4e4b60c-900x506.jpg)
孤独が有毒な活性酸素を蓄積させるなら、除去することで悪影響も払しょくできるのか?
答えを得るため研究者たちは、孤独アリの体に抗酸化物質を投与することにしました。
抗酸化物質は活性酸素をはじめとした酸化ストレスを減らす効果が知られています。
結果、抗酸化物の投与によって孤独アリの寿命短縮量が有意に緩和され、生存率が大きく上昇すると判明。
また抗酸化物質の投与は孤独アリの早い移動速度や長い移動距離には影響を与えませんでしたが、壁の近くに滞在する時間を大きく減らしたことがわかりました。
さらに、アリの体のどの部位で活性酸素が取り除かれることが重要かを調べたところ、意外な結果が得られました。
一般的に行動パターンの制御は脳で行われるため、脳の活性酸素を取り除くことが重要だと思われていました。
しかし、実際には、脳や消化管から活性酸素を取り除いても変化はみられず、代わりにアリで肝臓の働きをする部位(脂肪体)で活性酸素が除去されると、寿命短縮や行動異常の緩和が確認されました。
この結果は、孤独アリの寿命を短縮させたり異常行動を起こしたりするのが、アリの脂肪体に蓄積した活性酸素であることを示しています。
一方、グループアリに抗酸化物質を投与した場合、寿命を延ばす効果はみられず、むしろ短縮される傾向がみられました。
以前に行われた研究でも、孤立したげっ歯類で酸化ストレスが増加することが報告されています。
そのため研究者たちは、酸化ストレスが孤独による行動や寿命の変化を、種を超えて引き起こしている可能性があると結論しています。
もし同様の仕組みが人間にある場合、適切な臓器への抗酸化剤の投与で、孤独の悪影響を緩和できるかもしれません。
孤独から脱するには友達を作ったりコミュニティーに属することが有用ですが、自閉症をはじめとした精神疾患の影響で、社会的接触に困難を感じる人も存在します。
そのような人々から孤独の悪影響を取り除くには、薬物を使ったアプローチが有効になる可能性があります。
今回の研究は、以前ナゾロジーと産総研のコラボで取材をさせていただいた古藤日子(ことう あきこ)さんが参加する研究チームの最新報告です。