ディズニーが追求する「可愛い動き」を現実のロボットで再現する
ディズニー映画に登場するキャラクターは、豊かな表情とコミカルな動きによって私たちを魅了してきました。
彼らは動作1つ1つで、「感情」「可愛さ」「ユーモア」「生き物らしさ」を伝えているのです。
そして、この特徴は動物のキャラクターだけが持つものではありません。
ディズニーのキャラクターは、たとえロボットだとしても、本当に生きているかのようであり、どこか「人間っぽさ」があるのです。
例えば、ディズニーの子会社ピクサーが手掛けたCG映画『ウォーリー』には、健気で可愛らしいロボット「ウォーリー」が登場します。
また『スター・ウォーズ』シリーズの「R2-D2」や「C-3PO」なども有名ですね。
加えてスター・ウォーズのゲームやドラマに登場した「BD-1」も、コミカルで可愛らしい動きをしています。
そして最近、ディズニー・リサーチは、「BD-1」に似た本物の二足歩行ロボットを開発し、国際ロボット学会「IROS 2023」で公開しました。
この小さなロボットは、まるでディズニー映画から出てきたかのような可愛らしくてコミカルな動きを特徴としています。
動画では、4自由度の頭部と2本の触覚が目まぐるしく動いており、人間が指さした場所を瞬時に見ることができています。
また5自由度の脚部によってバランスを取りながら歩行することも可能です。
全身を使った動きを見ていると、「このロボットには本物の感情がある」と錯覚しそうになるほどですね。
このように「ロボットの動きで感情を表現する」ことが追求されるのは稀です。
なぜなら、ディズニー・リサーチの科学者モーガン・ホープ氏が述べるように、「ほとんどのロボット工学者は、二足歩行ロボットを確実に歩行させることに重点を置いている」からです。
しかしキャラクターアニメーションにおける深い歴史を持つディズニーは、「確実な歩行」だけでなく、「感情を伝えたい」と願ったようです。
ディズニー映画のキャラクターのように「闊歩したり、跳ねたり、こっそり歩いたり、小走りしたり、蛇行したり」するロボットを開発したかったのです。
とはいえ、一般的なアニメーションは物理学をいくらか無視しており、対照的に現実のロボット工学は物理学に忠実でなければいけません。
研究チームはこのギャップを埋めるために、新しいモーション学習システムを開発しました。
このシステムでは、アニメーターが考案する「感情があふれ出るモーション」を、物理学に基づいて、できるだけ再現するよう開発・調整します。
モーターの性能、質量分布、ロボットと地面の間の摩擦などのパラメーターに僅かな変更を加えながら、PC上でシミュレーションし、何度もトレーニングしていくのです。
研究チームによると、この方法は開発期間を短縮する上でも大きなメリットがあり、数年間に相当するトレーニングを僅か数時間で実行できるようです。
結果として、この新しいロボットは1年もかからずに開発できました。
Here’s some video of these cute little roaming droids in action at Disneyland pic.twitter.com/EIlVRJWSw1
— Disneyland News Today (@dlnt) October 12, 2023
そして完成した二足歩行ロボットは、スター・ウォーズの世界を再現したテーマランド「スター・ウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ」で早速テストされたようです。
ロボットの動きに感情を注入するディズニーの取り組みは、今後もロボット開発の可能性を大きく広げていくことでしょう。