アクネ菌には皮膚健康に良い側面があることが指摘されていた
皮膚は身体全体を包む人体最大の臓器とみなされていて、体温調節や保湿、病原体による感染防御など、複数の重要な役割を担っています。
皮膚の最外層を構成する脂質は、皮膚の機能に不可欠です。脂質組成が変化すると、保護バリアとしての機能が損なわれ、湿疹や乾癬をはじめとするさまざまな皮膚疾患を引き起こす可能性があります。
皮膚に生息する微生物群(マイクロバイオーム)は、脂質バリアと密接に相互作用しています。これらの微生物は、皮膚の脂質を栄養源として利用し、その過程で皮膚の健康に影響を与えます。
皮膚のマイクロバイオームは、多様な微生物種によって構成されており、アクネ菌(Cutibacterium acnes)もその一部です。
ニキビの発生は、マイクロバイオームのバランス崩れによる皮脂の過剰生産が関連しています。
アクネ菌は、過剰な脂質を栄養源として利用するため、脂質が多いとアクネ菌が増殖しやすくなり、それがニキビ形成につながる可能性があるというわけです。
このようなアクネ菌のはたらきは、この菌をニキビの原因として有名にしましたが、一方で、アクネ菌には良い側面がある可能性も指摘されていました。
先行研究では、アクネ菌は黄色ブドウ球菌などの病原性細菌の増殖を抑制する効果がある可能性や、過剰に増えた常在菌の一種である表皮ブドウ球菌の活動も抑える可能性が示唆されていたのです。
このようにアクネ菌には、皮膚に対する悪い側面と良い側面があり、その全体像は完全には理解されていませんでした。
そこで、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California, San Diego)のアルモウラビー(Almoughrabie)氏らの研究チームは、皮膚マイクロバイオームに焦点を当て、皮膚が感染症や環境から身体を守る仕組みを研究しました。
結果、アクネ菌が皮膚のマイクロバイオームのバランスを整え、水分損失を減らし、微生物の侵入に対する抵抗力を高めることを発見したのです。