部活動の違いが将来の「骨の丈夫さ」に影響する?
骨密度は一般に20代にピークを迎え、50歳頃まで維持し、その後の加齢に伴って減少していきます。
女性では閉経後に骨密度が急に減少し始め、70歳以上の日本人女性の約4割が骨粗鬆症(骨密度が著しく低下した状態)にあると報告されています。
骨粗鬆症は男女ともに高齢者の転倒・骨折リスクを高めるため、懸念すべき問題です。
また骨密度は一度低下すると再び上がりづらいため、若い時期に最大骨密度を高めておくことが人生後半の健康を維持する上で重要だといわれています。
特に13〜18歳の青年期に骨への負荷が強い運動をしていると最大骨密度を高められることが以前から指摘されてきました。
例えば、バスケやバレーボールのように頻繁にジャンプと着地を繰り返すスポーツは、水泳やサイクリングなどに比べて骨への負荷が大幅に大きくなります。
しかし、青年期にやっていたスポーツ種目の違いが高齢期の骨密度に影響するかどうかは分かっていません。
そこで研究チームは、東京都文京区在住の高齢者1596名(男性681名、女性915名、年齢65〜84歳)を対象に、中高生時に所属していた「部活動」と高齢期の「骨密度」の関連性を調べてみました。
中高の「部活動」と高齢期の「骨密度」を比べてみた
参加者には身体測定や血液検査のほか、DXA法(2種類のX線による透過率の違いから骨密度を測定する方法)を用いて、高齢者の転倒リスクに関わることが知られる「大腿骨頸部(股関節の辺り)」と「腰椎」の骨密度を評価しています。
またアンケート調査では合計で31種類の部活動が確認されました。
チームはそれらを骨への負荷の大きさごとに次の5つのグループに分類しています。
1:強度の衝撃
垂直方向へのジャンプと着地による強い衝撃を頻繁に受けるスポーツで、主にバスケットボール、バレーボール、体操などが含まれます。
2:中程度の衝撃
垂直方向への衝撃は多くないものの、水平方向への衝撃や急旋回、急停止が頻繁にあるスポーツで、主にサッカー、野球、テニス、陸上競技、ハンドボール、バドミントン、ラグビー、柔道、剣道、空手などが含まれています。
3:反復性の低衝撃
一定の速度で長時間のパフォーマンスを行う際に地面への低い衝撃を伴うスポーツで、主に卓球や登山、ダンスなどが含まれます。
4:反復性の非衝撃
地面への衝撃がほとんどないスポーツで、主に水泳や弓道、ゴルフなどが含まれます。
5:非スポーツ
中学および高校で部活動に入っていなかった、いわゆる帰宅部です。
そして青年期の部活動と高齢期の骨密度を比較した結果、男女ともに高齢期における大腿骨頸部の骨密度が最も高かったのは、中高生時にバスケットボール部に所属していた場合でした。
男性では他にテニスやラグビーでも比較的高い数値が出ていますが、女性ではバスケットが断トツでした。
一方で、高齢期における腰椎の骨密度は女性だとバレーボールで最も高く、男性ではテニスやラグビーで最も高くなっています。
全体の平均を見ると、男女ともバスケットをしていると大腿骨頸部の骨密度が高くなり、女性ではバレーボールをしていると腰椎の骨密度が高くなっていました。
これはやはり、バスケやバレーに特有のジャンプと着地による骨への負荷の大きさから来ていると見られます。
また男性ではテニスやラグビーもかなり優秀な結果を出していたようです。
この結果は運動量の多いアスリートでなく一般人であっても、中高生時の運動経験が骨の健康に長期的な影響を及ぼしうることを示した貴重な成果です。
スポーツ庁の調べによると、近年は少子化の影響もあって運動部員数が減っており、2009年から2018年の間に中学生の運動部の所属者が約13.1%も減少したと報告されています。
その一方で最近は、”龍神ジャパン”や”火の鳥NIPPON”の愛称で親しまれるバレー日本代表や、”AKATSUKI JAPAN”で知られるバスケ日本代表の活躍が目覚ましく、バレーやバスケの人気が大いに高まりつつあります。
この流れに乗って、中高生のバレー部やバスケ部が活気付くと、将来的には健康なおじいちゃん、おばあちゃんが増えるかもしれません。