ゲップが出る仕組みとは?
ゲップは胃や腸に溜まったガスが口の方向へ逆流する現象です。
私たちは普段から呼吸や会話、食事を通して無意識のうちに空気を飲み込んでいます。
飲み込まれた空気は胃や腸に運ばれますが、空気が溜まり過ぎて内圧が高まると、逆流を防いでいる筋肉がゆるんで空気が食道の方に漏れ出し、ゲップとなるのです。
反対に胃や腸から逆流せず、そのまま大腸まで運ばれていくと「おなら」になります。
ゲップは食事中や食後に出ることがほとんどですが、過度なストレスや便秘、不健康な食生活を送っていると頻度が増えます。
ただゲップをすることで内部のガスが排出されるので、お腹や胸の圧迫感やムカムカが解消できます。
ゲップができない病気とは?
しかし稀な症状として、ゲップをしたくてもできない場合があります。
これは「逆行性輪状咽頭機能障害(retrograde cricopharyngeus dysfunction:R-CPD)」と呼ばれる病気で、2019年に正式な病名が付けられたばかりです。
R-CPDは英語で 「ノーゲップ症候群(no-burp syndrome)」 とも呼ばれ、気管上部にある輪状の筋肉(輪状咽頭筋)の問題によって引き起こされます。
私たちがゲップをするときは普通、この輪状咽頭筋が弛緩して胃や腸の余分なガスを喉から排出していますが、R-CPDでは輪状咽頭筋が硬く収縮したままであるためにガスを排出できなくなるのです。
R-CPDにかかると、腹部の膨張感や圧迫感、過度の鼓腸(腸管内にガスが溜まり過ぎる状態)、首や胸の辺りでゴロゴロ音がするといった症状に悩まされます。
そのため身体的に苦しいだけでなく、会議中や会食中にゴロゴロと音が鳴ってしまうなど、社会的にも辛い思いをしてしまうのです。
現在知られている治療法
今のところ、R-CPDに効果のある治療法がひとつ確立されています。
それが「ボトックス注射」です。
ボトックス注射とは、ボツリヌス菌が作り出す筋弛緩作用のある毒素を緊張している筋肉に注入することで、筋肉を弛緩させる方法で、主にシワを軽減する美容整形で使われています。
ボツリヌス毒素は、天然のタンパク質からできた毒素を分解・精製しているので、ボツリヌス菌の有害な成分などは一切含まれていません。
現在のR-CPD治療では、これを硬くなった輪状咽頭筋に注射してゲップの排出を促し、患者の80〜90%で治癒ないし改善が見られています。
その一方で、R-CPD研究の歴史は浅く、患者数も少ないため、まだまだ多くのことが知られていません。
そこでテキサス工科大学健康科学センターの医学研究チームは、R-CPDの理解をより深めるために、一般人を対象とした調査を行いました。