3D撮影&DNA採取ができる新型ROVを開発!
深海は地球上で最も探索の進んでいない場所の一つであり、未知なる生物の宝庫となっています。
しかし現在、研究者たちが深海で捕まえた生物を新種と決定づけるには、困難なプロセスを踏まなければなりません。
まずは生きた標本を採取する必要がありますが、深海生物の多くは軟体で骨がなく、組織も薄くて非常に脆いため、採取が難しいのです。
捕捉の際に生体標本を傷つけてしまったり、持ち帰る際に劣化してしまったりと、高品質のDNAサンプルが得られにくいことも問題です。
さらに持ち帰られたDNAサンプルは世界中の生物データと比較しながら、新種か既知種かを決める長い道のりが始まります。
種の特定までは数年という長い時間がかかることも普通で、最長の部類だと21年の期間を要したこともあるという。
そんな中、ロードアイランド大学ら複数の研究機関が参加した共同プロジェクトで、これらの難点を解決する新型ROVが開発されました。
この新型ROVは数年前から開発がスタートしており、主に深海生物を高解像度で撮影できるカメラと、深海生物を優しくキャッチして、その場でDNAを採取できるロボットアームを特徴としています。
まずカメラについては、モントレー湾水族館研究所(MBARI)のバイオエンジニアチームが中心となって、4Kカメラ(上図の①)の他に、2つの高度な撮影システム:EyeRIS(②)とDeepPIV(③)を搭載しました。
4Kカメラは遭遇した深海生物をそのまま高解像度で撮影するものですが、EyeRISとDeepPIVは光学技術やレーザー技術を使って生物をスキャンし、その全体像を3Dで再構築して画像化するものです。
特にDeepPIVの方は、生物の表面だけでなく、体内の特定の深さの層だけをイメージ化することもできます(スライス画像のようなもの)。
そしてもう一つの重要な装置が、深海生物を捕捉するロボットアーム(④)です。
これには折りたたみ式の12面体を採用しており、生物をアームの中心に捉えると12面体が折り紙のように畳まれながら、優しく生物を内部にホールドします。
生物には直接触れないので、体を傷つけることなく採取し、またリリースすることもできます。
ただロボットアームが生物のDNAを採取するためには、現状生物を殺めなければなりません。
アーム内部の回転式ブレードで標本を細かく断片化し、それをROVの容器内に吸い込んで防腐剤を充填して保存します。
こうすることでより質の高いDNAサンプルを研究室まで持ち帰ることが可能となります。
残念ながら現段階では生物標本を破砕して、DNAを採取するのが限界ですが、チームは将来的に生物の命を奪うことなくDNA情報を取得し、キャッチ&リリースができる装置の開発を目指しています。
そしてチームはこの新型ROVを使って、深海での実証テストを行いました。