毎年30万人の若者が借金を背負って社会に出ている
昨今は高等教育への需要の高まりと、日本学生支援機構(JASSO)の拡大を背景に、奨学金の受給者数や受給額が急速に増大しつつあります。
高等教育とは、中学卒業後に続く段階を指し、普通科高校・高等専門学校のほか、高校卒業後の大学・短期大学・専門学校・大学院などを含んだ教育課程です。
高等教育の在学者におけるJASSO奨学金の受給率は現在、1990年代前半の10%台から40%台にまで上昇しているといいます。
これは国勢調査の人口推計から試算すると、40代半ばまでの成人世代のうち、およそ4人に1人が奨学金を利用したという規模です。
加えて、受給者の大半は「貸与型」の奨学金であり、「給付型」はごく少数に限定されている点も問題視されています。
奨学金には大きく分けて「給付型」と「貸与型」があり、給付型は文字通り、お金を給付されるので返済する必要がありません。
ただ採用基準が高く、なかなか審査に通らないという難点があります。
これに対し、貸与型は審査基準こそ低いものの、お金を借りる形なので卒業後に返済義務が発生します。
また貸与型は「第一種(無利子)」と「第二種(有利子)」の2つに分けられ、第一種は借りた分だけを返せばいいのに対し、第二種は借りた分にプラスして利子を返さなければならないので、負担がさらに大きくなります。
受給者の多くはこの貸与型となっており、今後も毎年30万人前後の若者が借金を背負った状態で社会に出ていくと見込まれているのです。
奨学金の負債は若者のライフイベントに影響するのか?
奨学金負債が若者世代に与える影響は、他国で大きく注目されています。
例えば、アメリカでは奨学金の返済義務を負った若者の就職、進学、転職、結婚、出産、車・住宅の購入などに及ぼす影響の実証研究が数多くなされているのです。
一方、日本ではそうした調査がほとんど行われていませんでした。
そこで本研究チームは、国内で初めて、貸与型の奨学金利用が若者世代の家族形成に及ぼす影響を調べることにしました。