描かれたのは実際とは違うヘンテコな姿
メガロサウルスは現在、中生代のジュラ紀(約2億130万〜1億4550万年前)にヨーロッパ・北アメリカ・アジアに広く分布していた獣脚類の一種であることが分かっています。
獣脚類とはティラノサウルスやヴェロキラプトルを代表格とする肉食恐竜のグループです。
全長は約7〜10メートルに達し、ティラノサウルスと同じような姿勢で二足歩行をしていたと考えられています。
ところが当時はごく一部の化石しか見つかっていなかったため、メガロサウルスの姿の大半は想像に頼るほかありませんでした。
バックランドは自身の講義の中で「全長が12メートルを超え、四つん這いで歩いていた」とメガロサウルスについて評しています。
そうして復元されたメガロサウルスの姿はこうでした。
これはバックランドらが当時の時点で持っていた知識を踏まえると、無理もないことです。
今日の私たちなら当然のごとく知っているような「二足で歩く恐竜」なんて概念はありませんし、全骨格を正確に記述するための十分な化石も見つかっていませんでした。
その中で彼らが頼りにできたのは四足歩行のトカゲだったのです。
イギリスの著名な彫刻家であるベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズ(1807〜1894)は、1854年にロンドン南東部にあるクリスタル・パレス公園内に、当時の知見にもとづいて制作したメガロサウルスの彫刻を公開しました。
現在も残っているその彫刻がこちら。
見つかっている化石は限られている上に、筋肉や脂肪、皮膚などは基本的には化石として残りません。
そうなると骨格以外の軟部組織はほとんどが空想にもとづくため、恐竜がぽっちゃりになるかガリガリになるかは当時の古生物学者たちの裁量次第だったのです。
しかし後世の恐竜研究や化石発掘が進むにつれて、メガロサウルスの生前の姿もかなり明瞭となっています。
今現在のメガロサウルスの復元像はこちらです。
獣脚類の仲間であるティラノサウルスと同じ二足歩行であり、体表面に斑点模様が見られます。
またこちらも近年の恐竜研究で明らかになってきたように、体の一部に羽毛のような毛を持っていたのではないかとも考えられています。
恐竜研究は今や古生物学のメジャーなジャンルになっており、多種多様な恐竜たちの姿や生態が現代に蘇りつつあります。
映画『ジュラシック・パーク』や『ジュラシック・ワールド』シリーズに登場する恐竜たちは、まるで作り手たちが実際にその目で見てきたかのようなリアルさです。
それでも恐竜研究の最前線にいる専門家でさえ、すべてを正確に理解しているわけではありません。
結局は誰も実物の恐竜を見たことがないので、体の色や皮膚の質感、羽毛の構造、体の模様などは推測に頼らざるを得ない状況です。
今後の恐竜研究で、これらの謎が解き明かされることが期待されています。