マイクロマシンをどう動かせばいいのか?
アメリカの物理学者リチャード・ファインマンは1959年に、ナノテクノロジーの到来を予言していました。
天才の目にはすでにミクロサイズのマシンが人体の血流を泳ぎ回って病気を治療したり、薬を運んだりする未来が見えていたのです。
また1966年には、ミクロ化した医師団が患者の体内に入って冒険を繰り広げるSF映画『ミクロの決死圏』が公開されました。
そしてファインマンの予言から65年の時を経た今、この技術は現実のものになろうとしています。
科学者たちは今日、人体を旅することができるミクロサイズの乗り物「マイクロマシン」を開発することに成功しているのです。
残る問題はマイクロマシンを「どうやって動かすのか?」ということでした。
マイクロマシンは人体の狙った場所にピンポイントで薬を送り届けるだけでなく、環境中の汚染物質の検出や除去など、さまざまな用途が考えられています。
しかしミクロサイズの小ささゆえに、普通の車に使えるような電池やモーターを用いることができません。
加えて、マイクロマシンが小さくなるほど、液体中を移動する際の「粘性」が支配的になり、効率的に動かすことが難しくなります。
例えば、血のような液体もマイクロマシンにとっては糖蜜のようにトロリとした粘度を帯びる可能性があるため、血流の中を進むにはそれ相応の推進力が必要なのです。
これらを踏まえて、マイクロマシンに外部電源を搭載せず、高い推進力を与えるにはどうすればいいのでしょうか?
そこで研究チームが発案した奇策は「微生物をパイロットにする」というものでした。
では、その栄えあるパイロット第一号に選ばれた微生物を見てみましょう。