どうやって「黄金レタス」を作ったのか?
チームは今回、一般的なレタス(学名:Lactuca sativa)が自然に多くのβ-カロテンを生産できるような方法を模索しました。
しかし問題はそう単純ではなく、大きな課題がありました。
というのもβ-カロテンは通常、植物の細胞内にあって光合成を行う場所として知られる「葉緑体」で生成されます。
β-カロテンを増やすならば当然、葉緑体におけるβ-カロテンの生産量を増やす方法がいの一番に考えられるでしょう。
ところが葉緑体の中でβ-カロテンが増えすぎると、電気回路に過度な負荷がかかってショートしてしまうように、光合成が正常に機能しなくなるのです。
そうなると植物自体が枯れて死んでしまうので、元も子もありません。
そこでチームはこの難点を避けるために「β-カロテンを葉緑体とは別の場所で作らせよう!」とのアイデアを思いつきました。
具体的には、レタスが葉緑体とは別の細胞内でβ-カロテンを生産・蓄積できるように、β-カロテンの生合成経路を改変することにしたのです。
その実現のために、チームは「遺伝子工学」と「光照射処理」という2つの方法を取りました。
まず遺伝子工学では、β-カロテンを生成する酵素の遺伝子を組み換えます。
これにより、普通は葉緑体でのみ行われるβ-カロテンの合成を、細胞の他の部分でも行えるようになりました。
このおかげでレタスの光合成は正常な働きをキープできます。
これに加えて、光照射処理ではレタスに高強度の光を当てることで、光合成の活動レベルを増大させ、β-カロテンの生合成経路をより活性化。
この2つの方法でレタスが含むβ-カロテン量を通常の30倍にまで大幅に増加させることに成功したのです。
しかしβ-カロテン量が一気に跳ね上がったことで、レタスの見た目が大きな変貌を遂げています。
葉っぱの色が通常の緑とはガラリと変わって、キラキラと輝く黄金色になったのです。
ただこれは考えれば、ごく自然な成り行きでした。
β-カロテンは黄色・オレンジ・赤色などを示す天然色素の一種なので、その量が増えれば、当然ながら野菜の色も黄色や赤みが強くなります。
ここからチームは、新たに誕生したレタスを「黄金レタス(Golden Lettuce)」と命名しました。
またこれと同じ方法はレタス以外の葉物野菜にも応用可能であると研究者らは話します。
一方で、黄金レタスを実際に食べたときの栄養価、風味や香り、さらには安全性についてはまだ確認されていません。
その栄養価と安全性が実証され、安価な大量生産ラインを確立することができれば、黄金レタスが発展途上国に向けて供給されたり、私たちの食卓に並ぶ日は近いでしょう。
ファストフード店でも、栄養価の高い「黄金レタスバーガー」なるものが商品化されそうですね。
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