「黄金レタス」を開発しようと決めた理由とは?
β-カロテンは、黄色・オレンジ・赤色などを示す天然色素の一群である「カロテノイド」の一種です。
食材としてはニンジンやほうれん草、カボチャなどに含まれています。
またβ-カロテンは「ビタミンA」の前駆体(ある化学物質が生成する前の段階の物質のこと)であり、体内に摂取された後、小腸の酵素によってビタミンAへと変換され、体に作用します。
主な効果には抗酸化作用や眼病予防、免疫力の向上、ある種のがんの抑制といったものが挙げられます。
その一方で研究チームは以前から、発展途上国における「ビタミンA欠乏症」の問題に関心を寄せていました。
特にアフリカやインド亜大陸、東南アジアの一部地域を中心に、約1億4000万人の子供たちがビタミンA欠乏症に陥っているといわれています。
これはビタミンAを含む野菜や果物、動物性食材の入手が困難になっていることが原因です。
ビタミンA欠乏症になると、最初に「夜盲症(やもうしょう)」という症状が現れ、夜間や暗い場所での視力が著しく低下します。
さらに重症化すると眼球乾燥症や失明に至り、また麻疹(はしか)といった重度の感染症を起こす危険性も増加します。
これに対して、ビタミンAを含むサプリメントの摂取が対策として考えられますが、サプリは一時的な栄養補助としては有効ですが、食事全体の質が改善されない限り、長期的なビタミンA欠乏の予防にはなりません。
それよりはビタミンAが豊富な自然の食材を普段から摂取する方が本質的な解決策となります。
(またサプリの過剰摂取は特定の栄養の偏りや副作用を起こす危険性がある)
これを踏まえてチームは「サプリなどの栄養補助食品ではなく、自然な食材から十分なビタミンAを摂取できる方法はないか」と考えました。
そこで考案したのが、β-カロテンを通常より多く生産する「黄金レタス(Golden Lettuce)」の開発だったのです。