21世紀の「くさりかたびら」は魔法が込められている
最初に行われたのは圧縮テストです。
試作品をゆっくりと押し込んでいき、PAM がどの程度“固体のように”ふるまうかを観察しました。
その結果、ある程度の力までは比較的簡単に変形しましたが、力が大きくなるにつれてリングやケージが噛み合い、急激に抵抗が大きくなることがわかりました。
これは外部からの強い衝撃や重みがかかったときに、より「硬い」性質を発揮するということです。
つまり
小さい力ならリングが滑り合い、ほとんど抵抗なく流体のように動く。
大きな力をかけるとリング同士がしっかり噛み合い、固体のように衝撃を吸収する。
――そんな魔法が込められているような反応を見せたわけです。
次に、横方向の力やねじり動作に対するテストが行われました。
弱い力で横にスライドさせると、リングが互いに滑り合って粒状物質のように流れる場合があることが判明しました。
さらにレオロジーテスト(流体の性質を調べる実験)では、力を加える速さや強さによって、液体のように「流れてしまう」状態と、「一気に粘度が高くなる」固体的な状態を行ったり来たりする、いわゆる非ニュートン流体的な動きを示すことがわかりました。
つまり、リング同士のすべりや再配置によってエネルギーをうまく散らし、全体の変形を抑えられたのです。
この性質は、防護材やヘルメットなど衝撃吸収を重視する製品にぴったりの可能性があります。
最後に、マイクロスケールのPAMに電気的な刺激を与える実験も実施されました。
すると、微小なリングやケージが相互作用して、電荷を加える向きや強さに応じて膨張・収縮する様子が観察されました。
これは外部からの電気信号を使って形を変える、バイオメディカルデバイスやソフトロボットの素材になるかもしれません。
こうした特性から、PAM は「粒状物質」と「結晶固体」の間を行き来する新しい素材として注目を集めています。
今後さらに研究が進み、実用化されれば、防護具や建物、さらには医療機器やロボット分野にまで、大きな変化をもたらす可能性があるでしょう。