あり得ない生存年代が判明⁈

今回の研究では、ハイドロキシプロリン(HYP)法という新しい放射性炭素年代測定技術が用いられました。
この技術は、骨に含まれる特定のアミノ酸の一種「ハイドロキシプロリン」を単離し、より正確な放射性炭素年代測定を行う方法です。
従来の測定法では、保存状態の悪い骨からコラーゲンを抽出するのが困難で、正確な年代測定ができませんでした。
しかし、HYP法では骨の汚染を極限まで取り除き、より純粋な試料から年代を算出することが可能になりました。
そして、この方法を用いた結果、ラペド・チャイルドの生存年代は紀元前2万5830〜2万6600年前の間であることが断定されたのです。
つまり、この混血児は今から約2万8000年前に生きていたことになります。

こうなると当然気になるのは、ラペド・チャイルドの生存年代とネアンデルタールの絶滅年代との矛盾です。
ネアンデルタールは4万年前に絶滅していますから、ラペド・チャイルドの両親のどちらかがネアンデルタール人だったという可能性はかなり低いと考えられます。
ただし、一部のネアンデルタール人が4万年前以降も小規模な集団として生き残り、そのグループが現生人類と交配した可能性はゼロではありません。
またもう一つの仮説は、ラペド・チャイルドが遠いネアンデルタール人の祖先の遺伝子を色濃く受け継いで、その特徴を発現した可能性です。
このいずれの考えが正しいのかは、今後のさらなる調査が必要となるでしょう。
現生人類とネアンデルタール人の混血がどのように進んだのかについては、まだ多くの謎が残されています。
ラペド・チャイルドはその謎を解き明かす貴重な存在となるかもしれません。