藻類の増殖が二酸化炭素排出を相殺できる

調査に当たっては、フランスの湿地から切り取った土のかたまりを遠くスウェーデンへ運び、逆にスウェーデンの土ブロックをフランスへ送るなど、まるで土ごと“気候帯を越える旅”をさせるという大胆な試みが行われました。
ブロックには排水を最小限にする仕掛けを施し、ほぼ自然環境に近い条件のまま気温や水分の変化にさらします。
研究チームは季節ごとに日射量や土壌の水分量、土の中の微生物の種類などを調べ、「気温が1℃上がったら、微細藻類はどれだけCO₂を取り込むか」「分解バクテリアはどれだけ排出するか」を緻密に追跡しました。
すると、1℃の上昇だけで微細藻類が取り込む炭素量が数mg/m²/hレベルで増加することがわかり、条件次第ではCO₂吸収が分解による排出を上回り得る可能性が示唆されました。
ただし、水分条件が合わない時期にはこの“プラスの効果”が弱まる現象も確認され、乾燥や過湿の度合いが大きく影響することも判明しています。
さらに研究グループは、こうした数値を北半球の泥炭地全体に当てはめたシミュレーションを行い、最悪の温暖化シナリオ(SSP 5-8.5)でも微細藻類の光合成が将来のCO₂排出の一部を相殺しうる、と結論づけています。
そして何より革新的なのは、この実験によって「実際の野外で土壌ごと気候帯を変える」という手法そのものが、微細生物コミュニティの複雑な応答を可視化したことです。
気温・水分・生物相など多層的な要素を同時に観察し、その総合的なバランスを探るやり方は、温暖化下の炭素循環モデルを大きく書き換えるヒントを提供すると期待されています。