冷たい水に浸かる「冷水浴」って結局どんな効果がある?
冷水浴やコールドシャワーが体にいいとされる理由には、さまざまな仮説があります。
たとえば、血流が改善して代謝が活発になる、交感神経が刺激されて集中力が高まる、炎症が抑えられて筋肉痛が軽減される、などです。
しかし、本当にそうした効果が身体の中で起きているのかについては、科学的な根拠がまだ乏しいのが現状です。
今回の研究では、オタワ大学の研究者たちが「冷水への継続的な曝露が細胞の防御機能にどのような影響を与えるのか」に注目しました。
対象となったのは、健康な23歳前後の男性10人です。
彼らは14℃の冷水に1日1時間、7日間連続で浸かるという条件のもと、実験が行われました。
研究チームは、その前後で採取した血液から、細胞内のストレス応答に関与するさまざまなタンパク質の量を測定しました。

ここで注目されたのが、「オートファジー(自食作用)」「アポトーシス(細胞死)」「熱ショック応答」、そして「炎症反応」という4つの細胞機構です。
オートファジーとは、細胞が不要なタンパク質や壊れた細胞小器官などを分解・再利用することで、細胞内環境を健全に保つ仕組みです。
これはストレス環境下や飢餓状態などでも活性化し、細胞の生存に貢献します。
一方、アポトーシスは細胞が計画的に死ぬことで、異常な細胞が周囲に悪影響を及ぼすのを防ぐ機構です。
これは過剰でも不足でも問題がある、きわめて繊細なバランスで制御されています。
また、熱ショック応答とは、温度ストレスなどによりタンパク質が損傷を受けた際に、それらを修復・安定化させる「熱ショックタンパク質(HSP)」を生成して細胞を守る反応です。
さらに、炎症反応とは、身体が損傷や異物に対して示す防御的な反応の一つです。
炎症は本来、感染や外傷から体を守るために必要な反応ですが、過剰に起きると慢性疾患の原因にもなりかねません。
研究者たちは、これら4つの反応が冷水刺激によってどのように変化するのかを、実験初日、中日、最終日にわたって追跡しました。