ADHD薬が効くかどうかは”受容体のバランス”次第だった!
メリーランド大学医学部の研究チームは、健康な大人37名を対象に、メチルフェニデート(リタリン)を投与した状態と、偽薬を投与した状態の2回に分けて脳の画像を撮影しました。
このように健康な被験者を使った理由は、まず健常な脳の中で薬がどう作用するかを明確にし、そのうえで個人差の要因を探るためです。
ADHDの診断がある人の脳には多くのバリエーションがあるため、最初のステップとして健常者で統一された条件を確保する必要がありました。
使われたのは、PETスキャンやfMRIといった、薬剤の分布や、細胞・脳の活動を詳細に観察できる最先端の機器です。

研究の焦点は、薬を飲んだときにドーパミンがどれくらい増えるかではなく、もともと脳内にあるドーパミン受容体の種類とその分布バランスを分析することにありました。
ドーパミン受容体には、D1からD5まで5種類存在しており、D1とD2が主に注意力と関連しています。
D1受容体は集中すべき情報を強調する役割を持ち、D2受容体は余計な情報を遮断する役割を持っています。
そして研究では、この2つの受容体の比率(D1:D2)が、薬の効果に影響することが判明しました。
まず、D1受容体レベルがD2受容体レベルに比べて高い人ほど、薬を飲まない状態での記憶課題の成績が優れている傾向がありました。
しかし、それらの人は、メチルフェニデートを飲んだ時にドーパミンのレベルが上昇したにもかかわらず、注意力が改善することはありませんでした。

一方、D2受容体レベルがD1受容体レベルに比べて高い人は、薬を飲まない状態での認知能力は低かったものの、メチルフェニデートを服用することで、(偽薬と比較して)大きな改善が見られました。
これらの結果が示すのは、薬が効くかどうかは、飲んだ後のドーパミンの増加量ではなく、もともとの脳の受容体の分布バランスで決まっていたということです。
この発見は非常に重要です。
というのも、ADHDと診断された人の中には「どうして薬が効かないのか」と悩んだり、自分を責めたりする人もいるからです。
今後、ADHD患者を対象にした同様の検証が必要になります。
もしその研究でも同じ結果が得られるなら、「ADHDなのに治療薬が効かない理由」をはっきりと示すことになり、患者やその家族を安心させることができます。
効かない人にも理由がある。
そんな当たり前のことをやっと証明してくれた今回の研究は、多くの人にとって希望の光となるのではないでしょうか。
> D1受容体は集中すべき情報を強調する役割を持ち、D2受容体は余計な情報を遮断する役割を持っています。
感覚過敏(特に嗅覚と聴覚)があるADHD(診断済み)です。コンサータの効果を実感できるのはD2受容体が弱いから……だとすれば、感覚過敏もD2受容体の由来の情報を遮断する能力の弱さの表れだったりするんでしょうか。面白いですね!