「3剤カクテル」は猛毒19種に保護効果を示す!万能薬の誕生に近づく
この解毒カクテルは本当に有効なのでしょうか。
研究チームは、WHOが最も危険と定めるカテゴリー1および2に分類された毒ヘビ19種の毒液を用い、マウスを使った実験を行いました。
対象となったヘビは、ケープコブラ、ブラックマンバ、キングコブラ、タイパン、タイガースネークなど、地域も属も異なる猛毒種でした。
それぞれの毒液を致死量でマウスに注射したところ、当然ながらすべてのマウスが死亡しました。
しかし、LNX-D09、SNX-B03、varespladibの3剤カクテルを投与すると、すべてのケースでマウスに対する防御効果が得られました。

研究チームによると、この新しい抗毒素(毒素を中和できる抗体のこと)は「13種類の毒に対して100%の防御効果を示し、残りの6種類の毒に対しては部分的な防御効果を示した」とのことです。
この結果は非常に驚くべきものです。
それぞれの成分が異なる毒の主成分に対して作用することで、3剤カクテルは毒の多様性を網羅的にカバーできたのです。
研究チームは、この3剤カクテルに4つ目の成分を加えることで「万能抗毒素」を開発できると考えており、「4つ目の因子は何だろう?」と新しい追加成分を探しています。
そしてその間も、今回開発された抗毒素の研究は続けられます。
ヒト臨床試験でその有効性が裏付けられるなら、より安価で容易な治療が可能になると考えられます。
ダメになりやすく高価な抗毒素を複数保管する代わりに、この製剤を1種常備するだけでよいのです。
約60種の毒ヘビが生息するするインドのような国では、まさに万能薬のように活躍するでしょう。
また、世界中のどこでヘビに咬まれても、同じ薬で治療できるようになるかもしれません。
これはつまり、解毒の革命が始まろうとしている、ということです。
そしてその始まりは、一人の男性の“狂気”じみた行動でした。
856回もの毒注射によって生み出された抗体が、世界中の命を救う「万能解毒薬」の礎になろうとしています。
こういうのこそAIや再生医療の出番な気がするのですが…。