何を書けばいいのか?
自分の感情や経験をありのままに書き出す心理療法は「エクスプレッシブ・ライティング(Expressive Writing)」と呼ばれています。
従来は、心の傷やストレスについて書くことで、感情の整理や回復を促す「ネガティブな経験や感情の開示」が主流でした。
自らのネガティブな胸の内を吐き出すことにより、メンタルヘルスを長期的に改善できることが示されていたのです。
しかし、こうした方法には一つのリスクがありました。
それは、ネガティブなエクスプレッシブ・ライティングが短期的にはネガティブな感情を強めてしまう可能性があったことです。

そこで近年注目されているのが、「ポジティブ・エクスプレッシブ・ライティング(Positive Expressive Writing)」です。
これは以下のような前向きなテーマを深く掘り下げて書くことを特徴とします。
・「最良の未来の自分(Best Possible Self)」
・「感謝している相手への手紙(Gratitude Letter)」
・「過去のポジティブな体験(Positive Experience)」
・「人生の意味や価値(Life Goals、Benefit Finding)」
研究によると、これらのライティングを1回15〜20分、数日にわたって繰り返すだけで、驚くべき効果が現れるとのことです。
たとえば、未来の理想の自分像を描く手法では、楽観性や自己効力感の向上、不安や抑うつの軽減が報告されています。
また「感謝の手紙」を書くと、幸福感やつながりの感覚が高まり、孤独感が減ることも明らかになっています。