特に効果のある2つのテーマがあった
今回のレビューで調査された51件の研究では、18歳以上の人口集団(一般の大学生や社会人、介護者など)を対象に、さまざまなポジティブ・ライティングの手法が試されてきました。
その中で最も一貫した効果が見られたのが「最良の自分の姿」と「感謝の手紙」の2つです。
「最良の自分の姿」とは、将来の理想の自分について詳細に書く方法で、幸福感、フロー体験(熱中状態)、自己効力感などを向上させる効果が報告されています。
とくに「書いたあとに目を閉じて未来を視覚的にイメージする」ようなアプローチを加えると、ポジティブ感情の高まりがより強くなる傾向も見られました。
一方の「感謝の手紙」では、他者との関係性の改善、孤独の軽減、ポジティブ感情の増大といった効果が見られました。
しかも、その対象は親しい人だけでなく、仕事仲間や亡くなった人に向けたものでも効果があったというのです。
ただし、全体としての研究の質には課題もあります。
たとえば、「誰でも効果が出るわけではない」点も明らかになってきています。
個人の性格特性(例:感情の抑制傾向、社会的不安、自己批判の強さなど)が効果を左右する要因となりうることが示唆されています。

このように、ポジティブなことをただ「思う」だけでなく、「書く」という行為にすることで、私たちの心はより深くその感情を体験できるようになると期待されます。
理想の未来を描いているとき、人は実際に前向きな自己を一時的に“体験”しているのです。
あるいは、感謝の手紙を書くことで、頭の中で相手との絆を再構築し、脳内で“つながり”の感覚が再活性化するとも言われています。
しかも、この方法は特別な機器やセラピストを必要とせず、誰でも今日から始められる心理トレーニングです。
落ち込んだとき、未来が不安になったときに、ノートを広げて、自分の中にある想いを言葉にしてみるのもいいかもしれません。