『数学が苦手な人』ほど電気刺激が効く理由

今回の研究は、「数学が苦手なのは、生まれつきの脳内ネットワークの弱さに原因があり、それを外部からの刺激で改善できる可能性」を示しました。
これは、「数学が苦手なのは努力が足りないからだ」といった、従来からの考え方を大きく揺るがす重要な成果です。
特に、前頭前野と頭頂葉の結びつきが弱く、生物学的に計算が苦手な人ほど、脳への刺激による改善効果が高かったことは非常に興味深い発見です。
この結果は、単に数学の成績向上を示しただけではありません。
これまでどれだけ努力しても結果が出なかった人にとって、脳内のネットワークという隠れたハンデを取り除けば、今まで報われなかった努力も報われるようになる可能性を示したとも言えます。
研究を率いたカドッシュ教授は、「これまでの教育改善の取り組みは、教える側、つまり教師の指導法や学習環境の整備ばかりに集中してきました。しかし、本当に教育格差を解決するためには、学ぶ側の脳の特性や神経生物学的な要素にも目を向ける必要があります。今回の研究が、そのための重要な一歩になればと期待しています」と述べています。
この言葉が示すように、生まれつき脳内ネットワークが弱いという「目に見えない壁」を外部からの刺激で取り除くことで、誰もが公平に学習の成果を得られるようになる未来が見えてきたのかもしれません。
また、この成果は私たちに教育そのもののあり方についても考えさせます。
これまで教育は、生徒が数学や語学などで苦労している場合、その原因を本人の努力不足や集中力の欠如、あるいは教師の指導力不足といった環境要因に求めてきました。
しかし近年の脳科学や心理学の研究は、人が何かを学ぶ能力は、本人の努力や環境の影響だけでなく、生まれ持った脳の特性にも大きく左右されることを明らかにしています。
つまり、教育を改善し、社会全体で学力の格差を減らすためには、生徒個々人が持つ脳の特徴や状態を科学的に理解し、それに応じた適切なサポートを提供する必要があることを示しているのです。
一方で、だからといって誰にでも同じ刺激を与えれば必ず成績が上がるという単純な話ではないことにも注意が必要です。
今回の研究を単純解釈し過ぎて、頭に筋トレ用の電気刺激パッドをつけるのは絶対にやめてください。
実は過去に行われた別の研究では、すでに高度な数学能力を持っている数学専門家(大学の教授)に同じ刺激を与えたところ、逆に計算能力が低下してしまった例も確認されています。
この現象は、既に完璧に調整されたエンジンに余計な手を加えると、かえって動きが悪くなるのと似ています。
つまり、元々うまく機能している脳内のネットワークに対しては、刺激が逆効果になる可能性があるわけです。
こうした事実は、脳への刺激が全ての人に一律に効果をもたらす万能薬ではないことを示しています。
重要なのは、誰の脳が刺激を必要としていて、どのような脳の状態の人に、どのような種類や強さの刺激を与えると効果的かを個別に見極めることです。
実際、研究チームも今後さらに細かな研究を進め、刺激の効果を個人ごとに最適化していく必要があると指摘しています。
現在、市販されている脳刺激デバイスも少数ですが存在します。
しかし、そうした一般向け製品の多くは、科学的な根拠が十分でないものも多く、実際に使っても本当に期待するような効果が得られるかはわかりません。
今回のような研究がさらに進展すれば、近い将来、個人の脳の特性に合わせて調整した「オーダーメイドの学習向上デバイス」が実用化される可能性もあります。
学校や塾、家庭などの現場で、一人ひとりの生徒の脳の状態を把握し、最も効果的な刺激を提供することで、それぞれの学習能力を最大限に引き出せるようになるかもしれません。
特に、学習障害や発達障害などで従来の教育方法が効果をあげにくかった子どもたちにとって、この技術が新たな希望となる可能性もあります。
この技術がさらに進化すれば誰もが自分の脳の特性に適した刺激を受けることで、秘められた能力を最大限に引き出せるようになる時代が来るかもしれません。
記憶力上げる刺激とか文学の方に効く刺激とかもあるのですかね。
さらにそれらは重ねがけ出来るのかという。
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