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人類は「自然を表現する言葉」を急速に使わなくなっている / Credit:Canva
humanities

「自然を表現する言葉」の使用頻度が低下している【200年で60%以上減少】 (2/2)

2025.08.26 11:30:38 Tuesday

前ページ200年間で書籍から「自然に関する単語」が60%も減っている

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親が「自然とのつながり」を子供に伝えることができていない

第2のアプローチでは、「自然とのつながり」が社会全体でどう変化したかを、ある計算モデルを用いてシミュレーションしました。

これは、仮想空間上に人々(エージェント)を配置し、それぞれが住んでいる場所の自然環境、親からの影響、感受性などの要素をもとに、心理的な“自然とのつながり”がどう変化していくかを計算するものです。

このシミュレーションは1800年から2020年まで、実に220年間を再現しました。

モデルでは、いくつかの条件が設定されています。

まず、都市化率は歴史的データに基づいており、1810年には7.3%だったものが、2020年には82.7%にまで増加しています。

また、家庭環境などを通じて親の「自然とのつながり」が子どもにも引き継がれる点も考慮されています。

その結果、このモデルが導き出した自然とのつながりの減少曲線は、先ほどの自然語の頻度データと95%以上の一致率を示したのです。

つまり、人々の“心の中の自然”の変化と、文化的言語の変化は、見事に重なっていたことになります。

さらにこのシミュレーションでは、「なぜ自然とのつながりが減少したのか」という原因にも迫っています。

最大の要因とされたのは、都市化や環境悪化そのものではなく、親から子への“自然のつながり”の伝達が途絶えたことでした。

自然環境が減少したことで、人々が自然を見なくなり、自然について語らなくなりました。

そして自然をあまり知らないまま育った親が、次の世代にも“自然とのつながり”を伝えられなくなったのです。

これら、世代を超えて蓄積され、自然との断絶が“固定化”していったといえるでしょう。

また、モデルは未来予測も行っています。

もし今から劇的な政策介入がなされ、子どもたちの自然教育が充実し、都市に自然が再び増えれば、2050年までは引き続き自然とのつながりが減少し続けますが、それ以降では回復に向かう可能性があることも示されました。

結局のところ、自然とのつながりは、一朝一夕に戻るものではありません。

しかしそれは、人間と地球の未来のために“取り戻すべきもの”であると、リチャードソン氏の研究は強く訴えているのです。

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