くしゃみで「塩」を出して脱水を防ぐ
では、どうやってチャクワラは塩分を「排出」しているのでしょうか?
彼らは進化の過程で、鼻の奥に特殊な腺を発達させました。
この腺は、体内の余分な塩分(主にカリウムやナトリウム)を血液から濾し取り、「高濃度の塩水」として鼻へ送り出します。
そして、一定量たまると、まるでくしゃみのように「ハクション!」と勢いよく鼻から噴き出すのです。
このとき排出される「鼻水」は、乾燥すると白い塩の結晶となり、チャクワラの鼻の周りに粉をふいたような跡を残します。
海外では、この“塩まじりの鼻水”を「スナルト(snalt)」(鼻水を意味するsnotと塩を意味するsaltを合わせた造語)と呼ぶこともあるそうです。
この仕組みのおかげで、チャクワラは体に危険なほど塩分が蓄積するのを防ぎ、体内の水分を保つことができます。
さらに、チャクワラは暑さにも強く、デスバレーのような気温49℃にも達する極限環境でも日中に活発に活動します。
天敵に襲われた際は、肺の空気を抜いて体をぺしゃんこにし、岩の隙間に身を潜めるという特殊な防御行動も知られています。
極限環境への適応が、彼らを「砂漠の生存マスター」に押し上げているのです。
チャクワラがくしゃみのようにして鼻から塩を排出するのは、決して気まぐれな行動ではありません。
過酷な砂漠という舞台で「脱水死」という最大のリスクを回避するため、進化が生み出した“命を守る仕組み”だったのです。