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ビフィズス菌の摂取で、肌のシミが目立ちにくくなる可能性

2025.11.01 07:00:35 Saturday

最近、「腸活」という言葉をよく耳にします。

ヨーグルトやサプリメントで腸内環境を整えると、便通が良くなり、肌まで明るくなる――そんな話を聞いたことがある人も多いでしょう。

けれど本当に、腸の状態が肌にまで影響するのでしょうか。

この素朴な疑問に答えようとしたのが、日本の順天堂大学大学院(Juntendo University Graduate School of Medicine)と森永乳業株式会社(Morinaga Milk Industry Co., Ltd.)の共同研究チームです。

研究チームは、健康な女性を対象にビフィズス菌(Bifidobacterium breve)M-16V株を12週間摂取してもらい、その肌の変化を分析しました。

その結果、冬場に悪化しやすい「シミ」や「毛穴」のスコアが、ビフィズス菌を摂取したグループで目立ちにくくなる傾向が確認されたのです。

これまで“お腹の健康”のイメージが強かったビフィズス菌が、肌の見栄えにも関わっている可能性が示されたというのは興味深い結果です。

この研究の詳細は、2025年9月に科学雑誌『Nutrients』に掲載されています。

ビフィズス菌の摂取が、成人女性の顔の皮膚に現れる褐色斑などの皮膚の劣化を抑制する可能性を確認 https://www.juntendo.ac.jp/news/24904.html
Imaging and Microorganism Analyses of the Effects of Oral Bifidobacterium breve Intake on Facial Skin in Females: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study https://doi.org/10.3390/nu17182976

腸の調子が肌の調子を左右する?

私たちの腸の中には、数百兆もの微生物がすみついています。

これらの腸内細菌は、食べ物の消化や免疫のバランスに深く関わり、私たちの健康を支えています。

近年の研究では、こうした腸内環境の乱れが肌トラブルにも影響していることが分かってきました。

たとえば、アトピー性皮膚炎やニキビなどの炎症性の肌疾患を持つ人では、腸内の善玉が少ないという報告があります。

そのため腸内環境のバランスが崩れると、体内で炎症を促す物質が増え、結果的に肌のバリア機能を弱める可能性があると考えられています。

このように、腸と肌は離れていても密接に結びついており、「腸皮膚相関(gut-skin axis)」と呼ばれる考え方が注目されています。

とはいえ、「健康な人の肌」に対して腸内環境がどの程度影響するのかは、これまで十分に検証されていませんでした。

そこで、順天堂大学と森永乳業の研究チームは、腸内の善玉菌を増やすことで肌の見た目に変化が起こるのかを検証する臨床試験を実施しました。

研究には、30〜79歳の健康な日本人女性120名が参加しました。

参加者をランダムに2つのグループに分け、片方には森永乳業が保有するビフィズス菌M-16V株を、もう片方には成分の入っていないプラセボ(偽の試験食)を12週間に渡って摂取してもらいました。

試験は東京の秋から冬にかけて行われ、乾燥や寒さによって肌状態が悪化しやすい時期を選んで実施され、肌の状態は、高精度の撮影装置VISIAシステムで評価しています。

この装置は、顔のシミ(brown spots)や毛穴(pores)、しわ(wrinkles)、赤み(redness)などを数値化し、見た目の変化を客観的に測定できます。

このスコアは0〜100点で、数値が低いほど肌状態が良いことを意味します。

また、便と肌のサンプルを採取して、腸内細菌や肌表面にすむ微生物(細菌・真菌)の構成も解析しました。

こうして、「腸の変化」と「肌の変化」を同時に追跡するという実験が行われたのです。

次ページシミと毛穴が「目立ちにくく」なった理由とは?

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