2つの「土俵」が、2つの違う答えを出してしまった

陽子のサイズを測る方法には、20世紀を通じて使われてきた伝統的なやり方があります。
それは「水素原子」を使う方法です。
水素原子は、ど真ん中に陽子が1個、その周りを電子が1個飛び回っているという、宇宙でいちばんシンプルな原子です。
この電子は陽子の電気に引き寄せられて軌道を描いていますが、よく観察すると、その動き方の中に陽子の大きさのクセがかすかに現れます。
物理学者はそのクセを丁寧に読み取ることで、陽子のサイズを間接的に割り出してきました。
20世紀後半から21世紀初頭にかけて、この方法などから得られるおよそ0.88フェムトメートル前後の値が「標準的な陽子のサイズ」とみなされていました。
(※1フェムトメートル = 1メートルの1000兆分の1です)
ところが2010年、ある国際研究チームがまったく新しい方法を試しました。 普通の水素原子のなかの電子を、「ミューオン」という別の粒子に置き換えてしまったのです。
ミューオンとは、電子によく似た性質を持つ「電子の重たい兄弟分」のような粒子です。
電子のおよそ200倍も重く、その重さのせいで陽子にぐっと近い軌道を描きます。
陽子のすぐ近くにいる粒子からは、遠くにいる粒子からは見えない陽子の細かいクセまでくっきり見える。
このため理屈の上では、ミューオンを使った測定は普通の電子を使った測定よりもずっと精密になるはずでした。
結果は確かに精密でした。
しかし出てきた数字は、それまで教科書に載っていた値より小さい、およそ0.84(0.8409)フェムトメートルだったのです。
「0.88と0.84」という2つの数字の違いは、単位がフェムトメートルであることもあり、違いはごくわずかにも思えますが、物理学の精密測定の世界では大事件でした。
電子で測ろうがミューオンで測ろうが、理論上はまったく同じ陽子を測っているのですから、答えは一致しなければおかしいからです。
これは「どちらかの実験か、あるいは計算のどこかに未解決の見落としがある」か、あるいは――もっと恐ろしい可能性として――「電子とミューオンで陽子の見え方が違う」という、私たちの知らない新しい物理法則が陽子のまわりにこっそり潜んでいることを意味しているかもしれませんでした。
物理学の基礎の基礎たる「陽子の大きさがわからない」という状態について、物理学者以外の人はそれほど危機感はないかもしれません。
しかし先ほどの計量スプーンの話を思い出してください。
物理学者にとってそれは、レシピ本の土台である「小さじ1杯」の目盛りが揺らいでしまうのに等しい、無視できない事態だったのです。
ここから「陽子半径パズル」と呼ばれる物理学の大論争が始まったのです。






























![シルバーバック かわいい海の生きもの CUBE 2X2 キューブ ツーバイツー|海の生き物デザイン 立体パズル スピードキューブ 5cm 子ども〜大人向け 知育 ギフトに最適 ([バラエティ])](https://m.media-amazon.com/images/I/41EJOOLgGXL._SL500_.jpg)






















