子は「教科書に書かれた値よりも小さかった」と確定――15年続いた物理学の謎、ついに決着へ
子は「教科書に書かれた値よりも小さかった」と確定――15年続いた物理学の謎、ついに決着へ / Credit:Canva
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陽子は「教科書に書かれた値よりも小さかった」と確定――15年続いた物理学の謎、ついに決着へ (3/3)

2026.04.08 20:30:36 Wednesday

前ページ2つの「土俵」が、2つの違う答えを出してしまった

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ついに「小さい方」で2つの土俵が一致した

ついに「小さい方」で2つの土俵が一致した
ついに「小さい方」で2つの土俵が一致した / Credit:Vitaly Wirthl, MPQ

陽子のサイズを測る舞台は、いま2つあります。

「普通の水素」で得られた値と、「ミューオン水素」から得られた値です。

この食い違いをどう解消するかが、その後15年の物理学の宿題となりました。

世界中の研究チームが挑んだのは「伝統の土俵」での測り直しです。

普通の水素(普通の陽子と普通の電子)を使って、これまでより精密な値を出そうという挑戦でした。

しかしどの結果も精度が足りず、出てくる数字はバラバラに散らばってしまい、ミューオンの値と本当に一致しているのか誰にも判定できない――そんな膠着状態が15年近く続いていたのです。

そこで今回、マックス・プランク量子光学研究所のチームが、伝統の土俵に立ったまま、普通の水素を使った測定としてはこれまでで最も高精度な測定にたどり着きました。

使われたのは、従来と同じ土俵にあたる「普通の水素原子(普通の陽子と普通の電子)」です。

これに紫色のレーザー光を当てて、原子の中で電子がエネルギーの低い状態から高い状態へジャンプするときに必要な光の振動数を、これまでにない精密さで読み取りました。

電子の動きは陽子の大きさによってわずかに変わるので、この振動数を正確に測れば、陽子のサイズを逆算できるのです。

得られた陽子の半径は、およそ0.84(0.8406)フェムトメートル。

この値はミューオンを使用した違う土俵の観測結果と一致しました。

つまり、長年「電子による測定」と「ミューオンによる測定」が違う答えを返しているように見えていたのは、これまでの電子を使った測定に精度不足やばらつきが残っていたためであり、今回の結果は、両者が同じ小さい値に収束することを決定的な形で示したわけです。

ではこの結果は、私たちに何をもたらすのでしょうか。

現代物理学は「標準模型」と呼ばれる巨大な設計図の上に成り立っています。 素粒子の振る舞いをほぼ完璧に説明する、人類史上もっとも精確な理論と言われるものです。

研究チームは今回の測定により、この標準模型を1兆分の1レベルという途方もない精度で検証することに成功しました。

陽子のサイズに関しては2018~2019年にかけて一応の決着はついたと半ば考えられていましたが、普通の水素原子を使った精密測定という、困難だった部分にあえて踏み込み、ミューオンを使用した結果とほぼ同じ値を出したという意味では、1つの区切りと言えるでしょう。

そのインパクトは大きく自然科学で権威ある『nature』への掲載へと繋がりました。

これは水素原子という舞台においては、標準模型にこれまでで最も厳しい合格点を与えたのと同時に、理論の綻びを探す「物差し」を一段階細かくしたことを意味します。

標準模型はほぼ完璧と言われつつも、実は宇宙の大半を占めるダークマターの正体や、重力と量子の統合といった大きな謎をいまだに説明できません。

物理学者たちが今もっともやりたいのは、この完璧に近い理論を極限まで精密に試し続けて、ほんの小さな綻びを見つけることです。

綻びの先にこそ、まだ誰も見たことのない新しい物理法則が広がっているはずだからです。 陽子のサイズが定まったことは、地図の縮尺を細かくすればするほど「あれ、この海岸線、前の地図と少し違うぞ」という発見が生まれるのと似ています。

物質のもっとも基本的な部品のひとつである陽子。

その大きさが2つの方法でぴたりと一致して測れた今回の成果は、物理学者にとって、新しい世界地図を広げるための静かな、しかし確かな”最初の一歩”なのです。

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