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意味不明な言葉を発する赤ちゃんほど「読む能力」が高くなるという研究

2018.10.14 Sunday

Point
・幼児期に複雑な音声の喃語を話す人ほど、将来的に文字認識の能力が高く、ひいては識字力が高いことが判明した
・喃語に含まれる子音の割合が大きいほど、複雑な音声の発話をしていると考えられる
・成長初期段階の喃語の複雑性を測定することで、文字認識テストを行う前の早い段階で、将来的に読字障害が現れるかどうかを予測できる

バブバブ、アムアム…生まれて間もない赤ちゃんはとてもおしゃべり。大人には意味不明な「赤ちゃん言葉」つまり「喃語」を声に出すことで、少しずつ言葉を覚えていきます。

実は、複雑で意味不明な喃語を話す赤ちゃんほど、将来的に文字を読むのが得意になるかもしれないことが、フロリダ州立大学のケリー・ファルカーソン氏らが行った研究で明らかになりました。研究内容は、オープンアクセスの雑誌PLOS ONEに掲載されています。

A longitudinal study of infants’ early speech production and later letter identification
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0204006

赤ちゃんは生まれて2ヶ月ほどで母音を発声するようになり、生後6ヶ月目頃には母語の基本的な音を出せるようになります。多くの子どもは1歳までに最初の単語を言えるようになりますが、短い文を作れるようになるのは2歳に達してからで、4〜7歳頃までは文字を読めるようになりません。このため、読字障害(文字を読むことが困難である障害)が発覚するのは、子どもが文字を覚え始める3〜5歳以降だと考えらえてきました。ファルカーソン氏らは、幼児期のおしゃべりの複雑さを測定することで、より早い段階で言語能力を評価し、成長後に読字障害が出現する可能性を予測できないかを探りました。

研究チームは、英語を話す米国人の家族のもとに生まれた生後9ヶ月〜2歳半の幼児9名の追跡調査を行いました。まず、幼児が家族の中で主に世話をする人との間で交わす喃語を記録し、特に子音と母音の比率に焦点を当ててデータを分析しました。子音の割合が大きいほど語彙の発達が進んでいると考えられるため、子音と母音の比率を調べれば、発話の音声学的複雑さを測ることができると考えたのです。その後、子どもたちが6歳に達した時、研究チームは彼らの文字認識の能力を測定しました。文字認識能力を見れば、後に読字障害が出現するかどうかが分かります。

調査の結果、複雑な喃語を話す子どもほど、文字認識の能力が高いことが明らかになりました。サンプルサイズが小さく、被験者全員が読字障害を発生することなく正常に成長したため変動幅が制限されることを考慮したとしても、成長初期段階の発話能力とその後の識字力に相関性があることが示唆されました。

ファルカーソン氏らは、幼児期の喃語の複雑性を、文字認識テストよりもさらに早い段階で読字障害を予測できる指標として将来役立てられると考えています。成長の初期段階で読字障害を発見することで、早期に対策を講じられるというメリットがあります。「実験結果は、幼児期の言語能力と成長後の識字力の間には、早くから強力な相関性が存在することを裏付けています。読字障害の早期発見に役立つ行動指標を確立するまで、あと一歩というところまで来ています」と、ファルカーソン氏は研究意義を説明しています。

読字障害を抱える人々を支援するため、文字を音声化して理解させる工夫が社会で行われています。たとえば、ノートテイクや試験などにICTを活用したり、コンピュータ画面上の文字を人工音声で読み上げさせるといった取り組みもその一部です。

今後、喃語の複雑性の測定を読字障害のスクリーニングに実現化できれば、読字障害を生じる可能性がある赤ちゃんにとっては救いの手となるでしょう。ファルカーソン氏らのこれからの研究に期待しましょう。

via: sciencedailydailymailjournals.plos / translated & text by まりえってぃ

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