Point
■スペインの天文台により撮影された太陽のクローズアップ映像が、「細胞」に似ていると話題に
■これは太陽内部から上昇する高熱ガスにより、表面上で対流現象が生じることが原因
■撮影範囲は縦3万3500km×横4万6900kmに及ぶ(地球の直径は1万2700km)
上記映像は、スペインのラ・パルマ島にある天文台の望遠鏡「Swedish Solar Telescope(SST)」により撮影された太陽のクローズアップ映像だ。
まるで人間の細胞のようにうごめいており、海外掲示板などで「植物や人間の細胞のようだ」と話題になっている。
研究チームによると、この細胞のように見えるのは太陽の表面部分(彩層)で生じる対流現象だ。内部から表面上に上がってきた高熱ガスによって、表面が熱せられることで起こる。
高熱ガスはその後、表面上で冷えることでまた内部に下降していく。
動画の全体は以下を参照。
大気の乱れを除去することで高解像度を実現
それでは、なぜここまで鮮明な映像が撮影できたのだろうか?
ここで少し天体望遠鏡の技術について触れてみよう。
今回使用されたSSTは、太陽活動における複数の波長領域を観測できる天体望遠鏡だ。研究チームによると、映像はスペクトルのK線に近い波長で撮影された。
K線とは、太陽光の可視光スペクトルにおいて観測される暗線の一つ。この暗線の全体をフラウンホーファー線と呼ぶ。
名称は発見者であるドイツの物理学者ヨゼフ・フォン・フラウンホーファーに由来している。
フラウンホーファー線は全部でおよそ570以上見つかっており、その中の主要な線をA〜Kの記号で表している。K線に相当する元素はイオン化されたカルシウムだ。
また、映像ではかなりの高解像度を実現しているが、当初は太陽表面の乱気流により不鮮明な映像だったという。
そこで研究チームは「補償光学(Adaptive Optics)」と呼ばれる画像補正技術を用いることで、この問題を解決した。
これは大気による映像の乱れを波面センサーで捉え、可変形鏡を変形させることで、大気の乱れを最小限に抑えて対象を明瞭に捉えるという技術だ。
太陽の高解像度撮影を実現するため、撮影範囲は縦3万3500km×横4万6900km四方に及んでいるそうだ。
地球の直径が1万2700kmということを考えると膨大な範囲であることが分かる。
改めて映像を見ると、生物の中の細胞の動きに驚くほどそっくりだ。
太陽と人間はまったく別物のようでいて、同じ宇宙の中で誕生したものである。もしかすると両者には、細胞レベルでの深いつながりがあるのかもしれない。