Point
■太陽系外縁の天体に見られる重力的な影響から、太陽系には地球10個分程度の質量を持った第9惑星が存在すると予想されている
■この第9惑星「プラネット・ナイン」について、実は惑星ではなく原始ブラックホールではないかと予想する論文が発表された
■初期宇宙の密度の揺らぎから生まれた原始ブラックホールは、理論上「プラネット・ナイン」の予想質量でも成立可能で、その場合サイズはボーリング程度になるという
ちょっと前まで、太陽系の第9惑星と言えば「冥王星」でしたが、残念ながら彼は岩の塊に降格されてしまったため、太陽系第9惑星のポストは現在空席になっています。
この空席に収まる可能性のある天体が、2016年頃から科学者の間で囁かれるようになりました。
それが「プラネット・ナイン」と呼ばれる未知の天体です。
重力的な影響から考えると、太陽系外縁には地球の10倍程度の質量を持った、巨大天体が存在する可能性が高いというのです。
「プラネット・ナイン」はその名の示すとおり、巨大惑星でいある、というのが大方の予想です。しかし、それが惑星ではなくブラックホールかもしれない、と予想する論文が発表されました。
さすがに太陽系にブラックホールは無いだろう、と思うかも知れませんが実は宇宙初期に誕生した原始ブラックホールは、理論上10万分の1グラムでも形成可能なのです。
この予想が正しければ、本当に太陽系に非常に小型のブラックホールを見つけ出せるかもしれません。
この論文は、アメリカのイリノイ大学、イギリスのダラム大学の研究者の共著で発表され、現在はコーネル大学arXivにて公開されています。
https://arxiv.org/abs/1909.11090
プラネット・ナインの存在を示す証拠
現在太陽系のもっとも外側を回る惑星は海王星と考えられていますが、そのさらに向こう側には太陽系外縁天体と呼ばれる、太陽系の軌道に属する惑星未満の岩の塊が回っています。
この外縁天体は、非常に偏った楕円軌道を描いていることがわかっていて、地球質量の5倍から15倍の質量を持った物体によって運動を乱されているようだと指摘されています。
その謎の物体を科学者たちは「プラネット・ナイン」と名付けて探しているのです。
「プラネット・ナイン」は、存在するとすれば海王星軌道の20倍、700天文単位(地球と太陽の距離を1とした距離単位)の半径を持つと考えられていて、1万年から2万年かけて太陽の周りを公転するとのこと。
「プラネット・ナイン」の存在について、最初に言及した論文は2016年に発表されました。その後観測や調査が進められましたが、光学観測での発見には至っていません。
しかし、重力マイクロレンズ効果による光の歪みなど、惑星サイズの重力を持つ天体が銀河からの光を短く歪めていることも発見されています。おそらく「プラネット・ナイン」が存在することは確かなのでしょう。
では遥か遠方の天体も観測可能な現代に、なぜ「プラネット・ナイン」はいつまでも発見することができないのでしょうか?