地上から見ると、もこもこした綿あめや、長い縞模様のように見える「雲」。その雲の形は自然が気ままに生み出すもので、明確な形状は持っていないように思えます。
しかし、実際ははっきりとした形状を作る場合があるのです。しかも、それは宇宙からしか見ることができません。
上の画像に写る花のような放射状の雲は「アクチノフォーム(ギリシャ語で「光線」の意)」と呼ばれる種類の雲です。
これは層積雲という高度2000m以下の領域に、大きいと300kmもの範囲に広がってできる雲です。写真右下に100kmのスケールがありますが、これと比較するといかに大きい雲なのかがわかるでしょう。
しかも陸地から離れた外洋上にしかできません。このため地上からこの雲を認識することは難しく、宇宙から衛星で観測しないと見つからない非常に珍しい雲なのです。
未解明の雲
アクチノフォームが初めて発見されたのは1962年のことです。
上の画像はNASAのテレビジョン赤外線観測衛星「タイロス5号」がペルー西部で撮影したもので、アクチノフォームを紹介する最初の写真です。
写真の番号は形成順で、2と3が典型的なパターンを作っています。
報告ではこの雲は、長いと72時間近く形を維持するそうです。
実はこのアクチノフォームという雲は、どのように形成されるかというメカニズムが良くわかっていません。
エアロゾル(空気中の微粒子)が関係していると考えられていますが、エアロゾルの振る舞いは研究が難しい分野であり、特に陸地から遠く離れた外洋上のエアロゾルが気象に与える影響を知ることは難しい問題です。
また、この雲は通常は一直線に並んで発生しますが、今回撮影されたものは広範囲に散らばって形成されています。
浮かんでいる位置も、一般的な層積雲の形成地域であるオーストラリア西部から北にズレており、今までの発見場所とは異なっていて興味深い、と研究者は語っています。
銀河のような渦巻状の腕を持つ不思議な雲。
何気なく見上げている雲でも、未だによくわかっていないものがあるというのはロマンがありますね。