- 南極大陸付近の海底で、9000万年前の植物の化石を保存した堆積物が見つかる
- 当時の南極は、平均気温が12度を上回り、温帯雨林が広く繁茂していた可能性が高い
凍てつく氷河に覆われる南極大陸は、現在、地球上で最も寒い場所として知られます。
しかし今回、インペリアル・カレッジ・ロンドン(英)とアルフレッドウェゲナー極地海洋研究所(独)の研究により、約9000万年前の南極大陸は、年間の平均気温が12度にも達し、温帯雨林が広く繁茂していたことが示唆されました。
2017年の掘削調査で、南極大陸の西側にあるパインアイランド氷河付近の海底から採取された堆積物コアに、65種を超える植物の根や花粉、胞子が発見されたのです。
当時の南極は、今と真逆の環境にあったのかもしれません。
研究の詳細は、4月1日付けで「Nature」に掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2148-5
南極はかつて森に覆われていた!?
9000万年前の地球は、恐竜たちが全盛を誇った白亜紀(約1億4500万年〜6600万年前)の中期に当たります。
この時代は、過去1億4000万年の中で最も温暖で、熱帯地方では平均気温が35度を超えていました。海面も現在より170メートルほど高かったようです。
他方でこれまで、同時代の南極大陸がどのような環境にあったのかはほとんど知られていませんでした。
研究チームが調査したパインアイランド氷河は、今日では南極点から2000キロ離れていますが、9000万年前は900キロ以内にありました。
その付近の海底で採取した堆積物をコンピュータ断層撮影で解析したところ、化石化した植物の断片が多種にわたり見つかっています。保存状態もかなり良く、個々の細胞構造や花を咲かせていた名残まで発見されました。
年代測定では、9200万年〜8300万年前の間のものと特定されており、南極付近で採取されたものとしては最古となります。
研究チームは、当時の気候状態を再構築するため、採取された化石サンプルとその子孫となる現生の植物、およびそれらが生息する複数の環境とを比較調査しました。
その結果、当時の南極の年間平均気温はおよそ12度と判明しており、これは今日のドイツの平均気温より2度ほど高い値です。夏になるとさらに温暖で、気温は19度前後で推移しており、川や沼地では20度を超えていたと推定されています。
同チームのヨハン・クラーゲ氏は「こうした条件を踏まえると、9000万年前の南極はまったくの無氷地帯で、かつ広範囲に温帯雨林が繁っていたでしょう」と指摘します。
これは、南極が年の3分の1は陽が差さない環境であることを考えると驚くべき事実です。
この結果はまた、当時の大気中における二酸化炭素濃度が、予想よりはるかに高かったことを示します。
論文内では、「白亜紀世界の二酸化炭素濃度は、1000ppm程度がこれまでの一般的な結論でした。しかし、南極の平均気温が12度に達するには、少なくとも1120〜1680ppmが必要である」と述べられています。
今後の調査次第では、当時の南極に適応した新生物の化石が発見されるかもしれません。