スイス・IBMチューリッヒ研究所の科学者ユクセル・テミズ氏が、レゴブロックを用いた顕微鏡を作成し、公開しました。
テミズ氏はふだん、マイクロ流体力学を応用した極小デバイスの開発に携わっています。
しかし、研究に使用されるマイクロ流体チップの観察には、数万ドルの材料費がかかる高性能顕微鏡が必要になります。
そこでテミズ氏は、安価なレゴブロックでの顕微鏡作成を思いついたそうです。
さらにレゴ顕微鏡には、普通の顕微鏡にはないメリットもありました。
顕微鏡の「組み立て化」と「経費削減」が可能に
一般的な顕微鏡の難点は、サンプルを真上からしか観察できないことでした。倍率や高さを変えられても、レンズの角度は変えられません。
しかし、レゴ顕微鏡は、カメラレンズの角度や高さを自由に調整できますし、サンプル台の回転や調節が可能です。
顕微鏡ではありますが、一眼レフカメラや特殊な撮影機材の設置にも対応しています。
画像撮影のために、シングルボードコンピューターの「Raspberry Pi」が搭載されており、ソフトウェアはテミズ氏自らがプログラミングすることで、画像処理やマシンラーニング機能を持たせています。
また、カメラレンズに接続できるモニターを設置して、サンプルの拡大映像も見ることができます。
レゴを用いたのは、単なる経費削減のためだけではありません。
テミズ氏によれば「顕微鏡をモジュール化することで、観察するサンプルの種類に応じて、顕微鏡を作り変えることができる」のです。
例えば、サンプルの手前に付いているライトの位置を変えたい場合、あるいは、大きなサンプルを観察するためにスペースを広くしたい場合など、レゴのバーツを取り外したり、付け加えることが対処できます。
また、分解しても簡単に作り直せるので、持ち運びにも便利です。
実際この顕微鏡を使用した研究で、有名科学誌に論文が掲載されているくらいです。
結果的に、完成した顕微鏡に使用されたレゴの総額は、たったの300ドルでした。
パーツの多くは市販されているレゴで代用でき、特殊なパーツは3Dプリントで新たに作られています。
レゴ顕微鏡の組み立てにかかる時間は30分ほどで、初めての方でも1時間くらいでできるそうです。
テミズ氏は「レゴ顕微鏡キットを商品化することで、学校教育にも取り入れられるようになれば」と話しています。
なお、レゴ顕微鏡の作り方は「github」にて確認することができます。