隕石が原因だが落下はしなかった
今回の研究は、この原因について新しい説を提案します。
その説では、小惑星は大気中で爆発せず、大気圏に弾かれて地球に落ちなかったというのです。
似たような事例は1972年、米国のユタ州とワイオミング州で目撃されています。
「1972年の昼間火球」と呼ばれるこの現象では、上空57キロメートルの大気圏内を10メートル以下の小天体が、100秒間通過し再び宇宙へ抜けていったとされています。
この様子は、ワイオミング州の国立公園を訪れていた観光客によって撮影されています。
これは隕石の大気圏突入角度が浅かったため、地球へ落下するほどには減速せずに、そのまま宇宙空間へ通り抜けていったという珍しい現象です。
研究チームは、同様の現象がツングースカで起きた可能性について考えました。
この研究では、大気圏で弾かれた隕石がツングースカ大爆発と同等の被害を及ぼす場合について、いくつかのシナリオをモデル化して検証を行いました。
その結果、直径約200メートルの鉄が主体の小惑星が、浅い角度で大気圏内に突入した場合、地上10kmまで接近した後、ほぼ無傷で宇宙へ出ていくことがわかりました。
このとき、小惑星周辺で急速に圧縮された空気は、観測されたような爆風を形成するのに十分だったと考えられます。
つまり、ツングースカ大爆発は隕石落下が原因ではなく、小惑星が浅く大気圏に侵入し通り抜けて行った衝撃波だったというのです。
これならば、クレーターも隕石の欠片も発見されない理由、空を青白い光が横切ったという目撃報告、甚大な被害について、全てに説明がつきます。
ただ、残念ながらこの現象はほぼ痕跡を残さないため、この事実を証明する方法がありません。
氷が主体の彗星が大気中で爆発したという可能性も捨てることはできません。確かなことは、もはや誰にもわからないでしょう。
しかし、もし事実ならば、この小惑星は今でも太陽に近い軌道を周回していると考えられます。いずれツングースカ大爆発の犯人と目される小惑星が発見される日が来るかもしれません。
この研究は、シベリア連邦大学の研究者Daniil E Khrennikov氏を筆頭とした研究チームより発表され、天体物理学に関する査読付き学術雑誌『王立天文学会月報』 に2月4日付で掲載されています。
https://doi.org/10.1093/mnras/staa329