人工赤血球を多機能化する
ベースとなるレプリカが完成すると、次に研究者は人工赤血球にヘモグロビン、薬物、磁性ナノ粒子、ATPバイオセンサーといった機能的な積み荷を積み込みました。
天然の赤血球はヘモグロビンしか搭載できませんが、人工赤血球は表面構造や充填物を調整することで様々な積み荷と結合、あるいは積載が可能になります。
そしてこれらの積み荷は、人工赤血球に載せられ、毛細血管の先まで到達させることが可能です。
マウスを用いた生体実験では、人工血液は48時間にわたり効果を発揮し、長期(4週間)にわたって無害であることも判明しました。
人工赤血球によ寄せられている期待は大きなものです。
人工赤血球の積み荷に致死性の高い毒素を入れれば、癌細胞や感染症と戦うことも可能になります。
医療目的以外にも、酸素運搬能力を向上させた改造ヘモグロビンを人工赤血球に載せることができれば、アスリートや兵士の身体機能を一時的に増加させられる他、高機動によって生じる高Gでも失神しにくくなります。
アメリカ空軍が研究を支援している理由は、もしかしたらこの辺りにあるのかもしれません。
一方で、犯罪者の手に渡れば危険が増すでしょう。
人工の超赤血球を接種した犯罪者の身体能力が飛躍的に上昇すれば、警察の取り締まりにも支障が出るからです。
人工赤血球が人類にとって、正しく使われることを願うばかりです。
研究内容はアメリカ、ニューメキシコ大学のジミン・グオ氏らによってまとめられ、5月11日に学術雑誌「ACS Publications」に掲載されました。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.9b08714
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