ちょっと前まで、太陽系の第9惑星と言えば「冥王星」でしたが、残念ながら彼は岩の塊に降格されたため、太陽系第9惑星のポストは現在空席になっています。
この空席に収まる可能性のある天体が、2016年頃から科学者の間で囁かれるようになりました。
それが「プラネット・ナイン」と呼ばれる未知の天体です。
重力的な影響から考えると、太陽系外縁には地球の10倍程度の質量を持った、巨大天体が存在する可能性が高いと言われています。
「プラネット・ナイン」はその名の示す通り「巨大惑星」というのが大方の予想です。しかし、それが惑星ではなくブラックホールかもしれない、と予想する研究も発表されています。
さすがに太陽系にブラックホールは無いだろう、と思う人も多いかも知れません。
しかし、71年にホーキング博士は宇宙初期に恒星の崩壊以外で誕生した原始ブラックホールという存在を予想していて、理論上1億分の1kgという質量もあったというのです。
ただ、予想されるような地球の10倍程度の質量のブラックホールは、サイズにするとボーリング玉くらいしかないと言われており、それを確認することは不可能だろうとされていました。
しかし、これを発見する観測計画をハーバード大学の研究チームが発表したのです。
『The Astrophysical Journal Letters』への掲載も決まったこの論文によると、最新鋭の望遠鏡「大型シノプティック・サーベイ望遠鏡」を使って、観測開始から1年以内にプラネット・ナインをブラックホールとして検出、またはその可能性が除外できるといいます。
この計画が実行されれば、本当に太陽系に惑星質量のブラックホールが見つけ出せるかもしれません。
プラネット・ナインの存在を示す証拠
現在太陽系のもっとも外側を回る惑星は海王星と考えられていますが、そのさらに向こう側には太陽系外縁天体と呼ばれる、太陽系の軌道に属する惑星未満の岩の塊が回っています。
この外縁天体は、非常に偏った楕円軌道を描いていることがわかっていて、地球質量の5倍から15倍の質量を持った物体によって運動を乱されているようだと指摘されています。
その謎の物体を科学者たちは「プラネット・ナイン」と名付けて探しているのです。
「プラネット・ナイン」は、存在するとすれば海王星軌道の20倍、700天文単位(地球と太陽の距離を1とした距離単位)の半径を持つと考えられていて、1万年から2万年かけて太陽の周りを公転していると予想されています。
「プラネット・ナイン」の存在について、最初に言及した論文は2016年に発表されました。その後観測や調査が進められましたが、光学観測での発見には至っていません。
しかし、重力マイクロレンズ効果による光の歪みなど、惑星サイズの重力を持つ天体が銀河から届く光を短く歪めていることも発見されており、おそらく「プラネット・ナイン」は存在するだろうと考えられています。
では遥か遠方の天体も観測可能な現代に、なぜ「プラネット・ナイン」はいつまでも発見することができないのでしょうか?