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「なぜ冷たいものが歯に染みるのか」という疑問がついに解明!あるタンパク質が「冷たいもの」に反応していた

2021.03.29 Monday

知覚過敏は、何らかの原因で傷ついた歯に冷たいものがしみる、よく知られた現象です。

歯磨きのしすぎや歯ぎしりによりエナメル質が磨耗することが原因とされますが、その化学的なメカニズムはよく分かっていません。

しかし今回、アメリカ、ドイツの国際研究チームにより、歯の中の「TRPC5」というタンパク質が低温に強く反応していることが突き止められました。

この結果は、知覚過敏の新たな治療法への応用が可能です。

研究は、3月26日付けで『Science Advances』に掲載されています。

‘Ice-cream toothache’: Cold food and drinks pain explained https://www.bbc.com/news/health-56536300 SCIENTISTS DISCOVER WHY TEETH BECOME SENSITIVE TO THE COLD https://www.inverse.com/mind-body/why-your-teeth-cant-stand-the-cold
Odontoblast TRPC5 channels signal cold pain in teeth https://advances.sciencemag.org/content/7/13/eabf5567/tab-figures-data

冷たいものに反応するタンパク質を特定!

知覚過敏の化学的な仕組みを解明するため、研究チームはTRPチャネル(一過性受容体電位型チャンネル)」というイオンチャネル(イオンを透過させるタンパク質の総称)を対象としました。

TRPチャネルは、生体内のほぼ全ての細胞に見られ、多くは細胞膜に存在して、痛み、温度、味覚などの感覚受容機能を担っています。

これが歯の中に存在することは知られていましたが、TRPチャネルはいくつかのサブファミリーに分かれており、どれが低温感受にかかわっているのかは分かっていません。

哺乳類TRPチャネルファミリーの系統樹
哺乳類TRPチャネルファミリーの系統樹 / Credit: bsd.neuroinf

そこでチームは、知覚過敏に関与するTRPチャネルを特定するべく、マウスとヒトの歯を調べました。

歯の損傷したマウスを用いて、低温に対する反応テストを行ったところ、「TRPC5」というサブタイプが強く反応していることが分かったのです。

さらに、TRPC5は、マウスの臼歯における「象牙芽細胞(Odontoblast)」という細胞層に集中していることが判明しました。

1.エナメル質、2.象牙質、3.歯髄
1.エナメル質、2.象牙質、3.歯髄 / Credit: ja.wikipedia

象牙芽細胞は、歯の内側にある歯髄を取り囲んでおり、エナメル質の下にある象牙質の形成を助けています。

また、傷ついたマウスの臼歯に低温刺激を与えると、砂糖水の摂取量が大幅に増えていました。

マウスは痛みを感じると、砂糖水の摂取量が増えることで知られています。

この結果はヒトの歯でも同様でした。

TRPC5が集中している象牙芽細胞からは、象牙細管というフィラメント状の繊維が伸び出ており、これが冷たいものと最初に接触します。

低温刺激は、このフィラメントを通って象牙芽細胞に達し、そこにあるTRPC5が低温を一種の痛みとして認識していたのです。

チームはこの結果を確認するため、歯科用の鎮痛剤などに含まれる「オイゲノール」という化学物質を用いて、マウスの歯のTRPC5を遮断してみました。

すると仮説通り、TRPC5の活性が低下し、マウスは痛みを感じなくなったのです。

研究主任のヨッヘン・レネルツ氏(ハーバード大学医学部)は「オイゲノールは以前から、歯の痛みを緩和することが知られていますが、今回の知見は、それが知覚過敏の治療薬として有効であることを改めて実証した」と述べています。

また、TRPC5を不活性化させる効果的な方法を別に見つけることで、知覚過敏の悩みもなくなるかもしれません。

【編集注 2021.03.30 11:00】
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