高速で拡がるリング状の光
光放射現象は、NASA(アメリカ航空宇宙局)の木星探査機・ジュノーに搭載された「紫外線撮像スペクトロメーター(UVS)」により検出されました。
UVSは木星のオーロラを赤外線で撮影する装置で、70~200ナノメートルの波長にある紫外線光子を敏感に捉えます。
光放射現象は、極付近に拡がる巨大なオーロラ「Auroral dawn storms」の中に見つかりました。
リング状の光が、秒速3.3〜7.7キロのスピードで急速に拡がり、最大で直径1000キロまで大きくなります。
研究主任のヴィンセント・ヒュー氏は「太陽風は太陽から放たれる超高速のプラズマ流で、それが木星磁気圏に到達して、ある方法で相互作用しオーロラを発生させると考えられますが、そのメカニズムは地球のオーロラほど理解されていません」と話します。
また、木星の磁場は地球より約2万倍も強力なため、近づいてくる太陽風を最大600万キロ先から逸らすことが可能です。
「UVSに記録された荷電粒子は、太陽風からのプラズマが木星のプラズマと相互作用する磁気圏の外側領域から放出されているようでした。
これはリング状の光放射が極付近の高緯度に位置することを説明しているでしょう」と同チームのバートランド・ボーフォンド氏(ベルギー・リエージュ大学)は指摘します。
SwRIのトーマス・グレートハウス氏は「数十年にわたる地球からの観測と、探査機による数多くの観測にもかかわらず、私たちは木星オーロラの仕組みを解明する上で太陽風が果たす役割を完全に理解していません。
木星の自転速度は約10時間と太陽系の中でもかなり速く、それに磁気圏内の荷電粒子の動きも大きな影響を受けています。
リング状の光放射の生成プロセスを理解するには、太陽風との相互作用を研究しなければならない」と述べました。
NASAは今年1月、ジュノー探査機のミッションを2025年9月まで延長することを決定しています。