睡眠の質を悪くするのは「スマホで見た内容」?
目の奥にある小さな網膜細胞は、光に反応することで「メラノプシン」というタンパク質を生成します。
メラノプシンは、概日リズムを調整し、脳に覚醒と注意を促しますが、特に敏感なのは波長480ナノメートル前後のブルーライトに対してです。
このことから、寝る前にスマホやPCを使用すると、メラノプシンが生成され、睡眠が妨げられると言われています。
そこで開発されたのがナイトモードですが、実際の効果はいかほどなのでしょうか。

アメリカのブリガムヤング大学、シンシナティ小児病院メディカルセンター(CCHMC)は今回、167人の成人を被験者に、3グループに分けた7日間の調査を行いました。
就寝前の1時間を対象に、グループ1はナイトモードをオンに、グループ2はナイトモードをオフにした状態でスマホを閲覧してもらい、グループ3はスマホ自体を使わないようにしてもらいます。
被験者には睡眠状態をトラッキングするハンドリストを装着してもらい、入眠までの時間、総睡眠時間、睡眠中の起床頻度などを記録しました。
その結果、睡眠の質に関して3つのグループに有意な差は見られなかったのです。
研究主任のチャド・ジェンセン氏は「ナイトモードをオンにしても、オフにしたグループと結果はまったく変わらなかった」と話します。
チームは、データをさらに掘り下げ、普段の平均睡眠が「7時間前後の人」と「6時間未満の人」に分けて分析しました。
その結果、7時間前後の人が、就寝前の1時間にスマホをまったく使わなかった場合のみ、若干の睡眠の質の改善が見られています。
一方で、スマホを使うグループでは、睡眠時間やナイトモードの有無に関係なく、睡眠状態に差はありませんでした。

「これらの結果は、ブルーライトが入眠の早さや睡眠の質にほとんど関係しないことを示す」とジェンセン氏は指摘。
その上で「ブルーライトよりも、スマホを使用する心理面の方が睡眠に影響しているのではないか」と続けます。
「ブルーライトが覚醒度を高め、寝つきを悪くすることを示す研究は多くありますが、その刺激の内、どれがライトによるもので、どれが心理的刺激によるものなのかを考えることが重要です」と述べています。
確かに、体の疲労度が高い場合、ブルーライトごときで目が覚めることはないでしょう。
むしろ睡眠の質を悪くしているのは、スマホで見た内容の方かもしれません。