思考した判断を相手の脳へ送受信する仕組み
送信者側の画面では、ゲーム画面を操作することができませんが、すべての情報が表示されていて、画面の両側には「Yes」「No」が表示されています。
それぞれの画面の下にはLEDが設置されていて、「Yes」のLEDは1秒間に17回点滅し、「No」の場合は1秒間に15回点滅します。
送信者は、プレイヤーがブロックを回転させるかどうかの決定について、対応する返答の光に集中することで、受信者(プレイヤー)へ送信します。
この装置の仕組みはどうなっているのでしょうか?
もちろん健康な人間の被験者で行う実験なので、電極を頭に突き刺すような危険な仕組みにはなっていません。
送信者は、脳内の電気的活動を検出する脳波計用キャップをかぶって、脳内の活動をキャッチしていきます。
送信者がLEDの点滅パターンを見つめると、キャップがそれらの信号を検出して、「Yes」または「No」に対応する信号を受信者に送信します。
受信者側の頭には、後頭部の位置にラケットのような形状のコイルが設置されています。
この装置は、目から入った情報を変換する脳領域を刺激します。
受信者は、ブロックを回転させるかどうかという判断を仰いだ際、送信者が「Yes」という脳信号を送ってくると、後頭部の装置が脳を刺激してフラッシュのような光の幻影を見ることになります。
答えが「No」だった場合には、何も見えません。
受信者(プレイヤー)側でも、「Yes」または「No」という信号を送信者に送ることができ、これによって両者は合議して行動を決定することができます。
結果、平均して各グループは81%の確率(16ラウンドのプレイで13回)で、ラインをそろえてゲームをクリアすることができました。
こうした結果から、研究チームは、1つの脳だけでは解決できない困難な課題に対して、人々が協力して解決できる脳同士をつなぐインターフェースが将来的に実現できるのではないかと期待しています。
しかし、この研究は今のところ、小さな一歩を刻んだに過ぎません。
機器は非常にかさばる上に高価です。そして、対応している課題はただのゲームに過ぎません。
こうした技術の本格的な実現は、未だSFの領域の中にあります。
それでも、この成果は興味深いものです。
人間の脳は1人だけでも非常に創造的な仕事や、職人的な技を発揮することができます。
将来的に10人、100人という規模の脳ネットワークを構築することができたとすれば、現在では解決できないような困難な問題をクリアする、新しいテクノロジーが実現できるようになるかもしれません。
また、こうした技術は思考を盗聴されるというような、新しい倫理問題を生み出す可能性もあります。
研究チームは、神経工学センターの神経倫理チームと協力して、その種の問題にも取り組んでいます。