朝食用シリアルの商品化を目指したウィル・ケロッグ
ウィル・ケロッグはジョン・ケロッグの弟で、兄の療養所で働いていました。
幼い頃から優秀で賢かった兄のジョンに対して、弟のウィルは子供の頃から近眼だったため、遠くが見えず愚かな子だと思われていました。
今ではあまりピンとこない話ですが、昔は近眼の人というのは能力の劣った人という見方をされていたのです。
このため、両親はウィルの教育にはあまり力を入れず、大学にも行かせませんでした。
そのため、ウィルは兄からお情けで療養所の仕事をもらい働いていたのです。
しかし、だからといってウィルが無能な人間だったわけではありません。
ウィルは、療養所でジョンの助手として、材料の調達から事務作業まで幅広くこなし、グラノーラの開発にも尽力していました。
固くて食べにくかったグラノーラに牛乳をかけて食べるという方法を思いついたのも、ウィルです。
現代ではそれが標準的な食べ方になっていることを考えれば、彼がいかに優れた発想の持ち主だったかが伺えます。
この当時、朝食というのは当たり前のものではありませんでした。
食料が不足していたこともありますし、多くの労働者階級は両親共働きどころか子供まで働きに出るような貧しい暮らしをしていたため、朝わざわざ食事を用意する時間もなかったのです。
ウィル・ケロッグはそこに目をつけました。
「世の中の人々は、手軽で健康的な食事を求めている。そして、そのニーズに療養所のグラノーラはピタリと当てはまる商品になる」
火も使わず、暖める必要もなく、ただ牛乳をかけるだけで食べられるグラノーラは、まさにこの時代に求められている食べ物だと考えたのです。
そこでウィルは、兄のジョンにグラノーラの商品化を持ちかけます。これは療養所の大きな資金源になるはずでした。
しかし、ジョンはあくまでグラノーラは療養所の患者たちに行う医療行為の一環であり、金儲けの道具にするなど飛んでもないと拒否します。
ビジネス感覚に優れたウィルにとって、グラノーラは目の前に転がっているドル箱でした。けれど、そこに手を出すことは兄ジョンによって阻まれてしまうのです。