植物由来の「おなら」は健康のサイン
野菜や果物、穀物、豆類などを多く摂取すると、排便量や鼓腸(腸管内にガスがたまった状態)が増えることは通説レベルではよく知られています。
しかし、その効果の大きさや、腸内細菌の活動レベルの変化を科学的に調べた研究はほとんどありません。
そこで、スペインの「肝臓・消化器病ネットワーク生物医学研究センター(Liver and Digestive Diseases Networking Biomedical Research Centre)」は、18歳から38歳の健康な男性18人を対象に、植物食がもたらす効果を調査しました。
実験では、「植物性食品を主とする地中海風のメニュー」と、「肉製品が中心になっている西洋風のメニュー」を用意。
被験者はそのどちらかに割り当てられ、一方の食事を2週間つづけた後、休憩期間を置き、もう一方の食事に切り替えて再び2週間過ごしてもらいました。
その結果、2つの食生活における1日の排便回数は変わりませんでしたが、植物食では1回の排便量が約2倍に増えていたのです。
デジタルスケールを用いて、排便量を測定したところ、肉食の生活では1日に平均100グラムだったのに対し、植物食では約200グラムでした。
本研究には参加していない、ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales・豪)のローズマリー・スタントン氏は「植物性食品を摂取すると、腸内のある種のバクテリアが植物の繊維を発酵させて、自らの食べ物を作るようになるからだ」と説明します。
増加した便は、こうした腸内細菌の残骸と、水および少量の未消化の植物繊維が混ざったものです。
これと別に、被験者は、携帯型カウンターを使って1日に何回おならをしたかを記録しました。
すると、植物食の生活を送っている際は、肉食生活に比べて、平均して1日に7回多くおならをしていることが判明しています。
さらに、1回のおならに含まれるガスの量も約50%多くなっていました。
ガスのほとんどは無臭の水素、メタン、二酸化炭素であり、腸内細菌が植物繊維を発酵させる際に発生するものです。
つまり、腸内細菌の働きが活性化されることで、おならの回数やガス量も増加します。
反対に、おならのキツイ臭いは、主にタンパク質の消化の副産物である硫化水素ガスに由来しています。
そのため、肉製品を多く摂取するほど、おならの臭いもキツくなります。
また、繊維質を発酵させる腸内細菌は、短鎖脂肪酸を放出する「善玉バクテリア」です。
短鎖脂肪酸は、大腸の健康維持に欠かせない化学物質であり、腸ガンを予防してくれます。
それから、短鎖脂肪酸は血流に吸収されてコレステロールを低下させ、血糖値を調整することで、心臓病や糖尿病も防ぎます。
本研究の成果は、植物食が腸内の健康を促進し、あらゆる疾患リスクを低下させることを証明するものです。
スタントン氏はこう述べています。
「おならは体内の調子が悪いサインだという西洋の考えは、まったくの誤りです。ほとんどの場合、おならは健康的な食生活と健康的な大腸のサインなのです。」