論文の冒頭部分をご紹介(意訳)
動物の生存は様々な脅威にさらされています。
外からの脅威の代表的なものとしては病原体があげられます。
しかし脅威は細胞やDNAの内部にも潜んでします。
動物や植物のDNAには勝手に飛び回って変異を引き起こす増殖性の配列(レトロトランスポゾン)が含まれているからです。
しかし線虫はDNAに潜む脅威(レトロトランスポゾン)を生存に有利な武器に変換しているようです。
線虫は緑膿菌が危険であるという情報を学習すると、自らのDNAに含まれるレトロトランスポゾン「Cer1」にウイルスにソックリな粒子を作らせ、学習された記憶を注入して仲間の個体に伝達していました。
またトランスポゾン「Cer1」によって作られるウイルスに似た粒子は、線虫の体内において自己の免疫力を強化し、最大で4世代にわたって「記憶遺伝」を行うための媒介としても活躍していました。
一方で、トランスポゾン「Cer1」を生まれながらに持たない野生の線虫(2種類)は「記憶の転送」や「記憶の遺伝」を行う能力がありませんでした。
以上の結果から、線虫はDNAに潜む脅威であるレトロトランスポゾンの能力を上手くハイジャックして、緑膿菌から自分自身や子孫を守っていることが示唆されました。
論文へのアクセスはこちら