マダニが原因の新しい感染症
2019年及び2020年にマダニに噛まれたと思われる患者が、過去に報告のない熱病を発症し札幌市内の病院を受診しました。
最初に報告されている2019年の患者は、40代の男性で5月中旬に山菜採りの際に、山林でマダニに噛まれたと考えられています。
男性はこの5日後に39℃台の熱を発症し、その後両足に強い筋肉痛の症状が出て歩行が困難になったことから、9日後に札幌市内の病院に入院しました。
マダニに噛まれた跡があったことから疑われる病気がいくつか考えられましたが、いずれも一致せず、患者から採取された検体を解析した結果、そこからは新規のウイルスが発見されたのです。
この新しいウイルスは「エゾウイルス(Yezo virus, YEZV)」と呼称され、このことは2020年1月に国立感染症研究所に報告されました。
今回の研究は、この報告を行った研究チームによるエゾウイルスの感染状況や地域分布に関する、疫学調査の続報となっています。
マダニは人間や動物から吸血を行う節足動物で,さまざまな病原体を媒介します。
最近の研究では、解析技術の発展によって、世界各地のマダニからウイルスを含む新種の微生物が次々と発見されています。
このため研究者からは、マダニ中にはまだまだ未知の病原体が存在するだろうと注意を向けられているのです。
研究チームは、2019年及び2020年の2名の患者の検体から、ウイルスを分離培養し、遺伝子配列解析装置を用いてこの新種のウイルス種を発見しました。
2名の患者からチームが発見したのは、ナイロウイルス(ブニヤウイルス目ナイロウイルス科)に分類される未知のウイルスです。
ナイロウイルスは人にも感染するものが確認されていて、他には出血熱の原因となる「クリミア・コンゴ出血熱ウイルス」などが報告されています。
気になるのは、エゾウイルスがどの程度広まっている病原体で、どの程度の危険があるのかということです。