新素材「ナタピューレ」の作り方
食品の乾燥・粉末化は、その食材の栄養を保持したまま、腐敗や変質を抑え長期保存を可能にする手法です。
また、品質のバラツキをなくし、計量による均一な加工再現ができることから、コムギ、トウモロコシ、大豆などで日々重宝されています。
最近では、フードロス削減のため、流通過程で(形状やサイズが規格外であることが原因となって)廃棄される野菜や果物を粉末化し、長期保存する取り組みが積極的に行われています。
その一方で、粉末化により元の食品が持っていた食感がなくなってしまうため、用途が限定されてしまうのも事実です。
たとえば、キャベツのシャキシャキとした個性的食感は、乾燥・粉末化により著しく低下します。
栄養価は維持されているのに、利用範囲が狭いという点が粉末化の大きな問題でした。
そこで研究チームは、農産物の粉末に対して、食感などの加工特性を与えるための新素材「ナタピューレ」を考案しました。
セルロースを主成分とするゲル状食品のナタデココは、破砕するのに高価な装置が必要とされます。
しかし本研究で、ナタデココにコムギ類に多く含まれるβ-グルカン(水溶性多糖)を加えることで、家庭用ミキサーでも簡単に破砕できることを特定しました。
また、β-グルカンの代わりにオオムギの抽出物や、あるいは市販の増粘安定剤(タマリンドシードガムなど)でも同じ効果が得られています。
こうして作られたのが「ナタピューレ」です。
ナタピューレは、適度な繊維質感を持ったピューレ状の素材であり、それを構成するセルロースおよびβ-グルカンは、食物繊維の一種として日常的に食される安全な物質です。
では実際に、ナタピューレにはどのような使い途があるのでしょうか。