加工食品は寿命を減らす
本研究では、アメリカ人の食生活に含まれる5853種類の食品を対象とし、それらが健康寿命に与える時間的な影響を分単位で算出しました。
研究チームは、食品ごとの算定に当たり、「健康栄養指数(Health Nutritional Index、HENI)」という指標を用いています。
HENIは、個人の食品の選択に関連した病気の罹患率や死亡率を調査した研究にもとづくデータです。
このデータは、牛乳、ナッツ類、果物、野菜、魚介類のオメガ3脂肪酸、多価不飽和脂肪酸(PUFA)といった健康に有益な食品や、加工肉、トランス脂肪酸、砂糖入り飲料といった有害な食品など、幅広くカバーしています。
これらをもとに、各食品1グラムを摂取した場合に、失われる/得られる健康寿命の分数を割り出しました。
例をあげると、加工肉1グラムを摂取すると寿命が0.45分失われ、果物1グラムを摂取すると寿命が0.1分プラスされます。
この推定値を用いて、アメリカ人が好んで食べるホットドッグの健康寿命への影響を計算。
その結果、バンズに挟まれた標準的なビーフホットドッグは、加工肉61グラムで27分の寿命喪失に相当し、これにナトリウムやトランス脂肪酸の成分が加わると、喪失時間は計36分に増えることが示されました。
ケチャップ、マスタード、マーガリンなどの量次第では、喪失時間がさらに増えるかもしれません。
他にも、ベーコンは1食あたり約6分30秒、ピザ1切れあたり7分8秒、ダブルチーズバーガー1個あたり8分8秒という喪失時間が算出されました。
これに対して、健康寿命を延ばす食品は、ナッツ・豆類、果物、非デンプン質の野菜、海産物などが挙げられます。
具体的には、サーモン1食あたり約13分5秒、バナナ1食あたり約13分30秒、アボカド1個あたり2分8秒のプラス効果があると推定されました。
魚介類は、10分程度から70分程度の寿命延長まで幅広くありましたが、これは健康に良いオメガ3脂肪酸の含有量が種類によって大きく異なることに起因します。
一方で、研究主任のオリビエ・ジョリエ氏は「これらの推定値は完全に正確なものではなく、効果には個人差もあり、特定の食品に対する反応も人によって違う」と指摘。
その上で「消費者がより健康的な食生活を選択するためのガイドラインとして役立てられるようにしたい」と述べています。
現代の栄養学研究では、加工食品が心血管疾患やガンの発症率および、それに伴う死亡率の増加に関与していることが分かっています。
間違っても「ホットドッグ1個で寿命が36分減ったから、リンゴ1個を食べて相殺すればいい」などと考えないようにしてください。
肝心なのは、加工食品やファストフード、砂糖入り飲料の摂取を控えることです。
食品の食べ合わせで寿命の増減をプラマイゼロにできるほど、健康管理は単純ではありません。