青空の下、遠くの山を背に、首に鈴をつけた明るい茶色のウマが立ち、そのそばでもう1頭のウマが草の上に座っている No.0030

ナゾロジー図鑑 ・ 生き物

ウマ

Equus ferus caballus

中指1本のひづめで、草原を駆ける。
人を背に乗せて、世界中へ広がった動物。

ナゾロジーの記事
32本
目で見わたせる範囲(視野)
350度以上
飼われているウマの寿命
25〜30年

ウマは、中指1本のひづめで立つ草食の哺乳類です。約4000年前から人とともにユーラシアに広がり、乗り物や農作業、競馬で活躍してきました。視野は350度以上あり、立ったままでも眠れます。日本には8品種の在来馬が残っています。

図鑑データ

分類
哺乳類 › 奇蹄目(ウマ目)› ウマ科 › ウマ属
学名
Equus ferus caballus(Equus caballus と書くこともある)
英名
horse(ホース)
漢字
馬
大きさ
体高(き甲までの高さ)は、乗馬に使う軽いウマで142〜163cm・体重380〜550kg、重いウマで163〜183cm・700〜1000kgほど。およそ147cmより低いウマはポニーと呼ぶ
体のつくり
各脚に第3指(中指)だけが残り、その先がひづめ。目は顔の両側にあり、視野は350度以上
食べもの
草(牧草・干し草)。体重450kgのウマで1日に7〜11kgを食べ、水を38〜45リットル飲む
寿命
品種や飼い方によるが25〜30年ほど。記録では62歳(オールド・ビリー)
増え方
妊娠期間は約11か月(平均340日ほど)で、ふつう1頭を産む。子は生まれてまもなく立って走れる
品種
世界に300以上。日本在来馬は8品種(北海道和種、木曽馬、野間馬、対州馬、御崎馬、トカラ馬、宮古馬、与那国馬)
ウマ属のなかま
ロバ、シマウマ3種、キャン、オナガー
頭数
世界に約5900万頭(2008年、国連食糧農業機関の見積もり)

ウマとは(何類? 何科? 特徴は?)

ウマは、草を食べてくらす大きな哺乳類です。分類では「奇蹄目(ウマ目)」のウマ科ウマ属に入ります。奇蹄目のなかまで今も生きているのは、ウマ科のほかに、サイ科とバク科だけです。英語では horse(ホース)と呼びます。

首と頭が長く、すらりと長い脚をもち、角はありません。4本の脚には、それぞれ真ん中の指(第3指)だけが残っていて、その先がかたい「ひづめ(蹄)」になっています。体の毛は短いのですが、尾と、頭から首の上にかけての「たてがみ」は長くのびます。

金属の壁の前で、明るい茶色の体に白っぽいたてがみと尾をもつウマが、左を向いて横向きに立っている
ウマの全身(横から)写真: Arquus(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

ウマは、人が飼いならした家畜です。今の家畜のウマは、ユーラシアの草原地帯から、約4000年前に各地へ広がりました。国連食糧農業機関(FAO)の見積もりでは、2008年の時点で世界に約5900万頭がいて、そのうち約3350万頭が南北アメリカ、約1380万頭がアジア、約630万頭がヨーロッパにいました。

同じウマ属には、ウマのほかに、ロバ、3種のシマウマ、キャン、オナガーの6種がいます。モンゴルなどの「モウコノウマ」はウマにとても近いなかまで、ウマと同じ種の亜種とされることも、別の種とされることもあります。

大きさと体のつくり(体重・目・歯・ひづめ)

ウマの背の高さ(体高)は、首と背中の境目のいちばん高いところ(き甲)までをはかります。乗馬に使う軽いウマは体高142〜163cm・体重380〜550kgほど、農作業などに使われてきた重いウマ(重種)は体高163〜183cm・体重700〜1000kgほどです。

競馬で走るサラブレッドは、体高160〜170cm、体重450〜500kgほどがふつうです。それでも差は大きく、日本の中央競馬では、338kgで勝ったウマもいれば、3歳で600kgをこえるウマもいます。

体高がおよそ147cmより低いウマは「ポニー」と呼ばれます。ただし、ポニーも分類ではウマと同じ動物です。記録に残るいちばん大きなウマは、19世紀に生まれたシャイヤー種の「マンモス」で、体高219cm、体重は最大で1,524kgと見積もられています。

  • 目:陸の哺乳類の中でもとくに大きな目が顔の両側についていて、見わたせる範囲(視野)は350度以上あります。両目で同時に見られるのは65度ほどで、人よりせまい範囲です。昼も夜もよく見えますが、赤っぽい色は緑っぽく見えると考えられています。
  • 耳:左右の耳は、それぞれ180度まで向きを変えられるので、頭を動かさなくても、まわりの音を聞きとれます。
  • 鼻:においをかぐ力は人よりずっと強いのですが、イヌほどではありません。鼻の奥には、なかまどうしの合図になるにおい(フェロモン)を感じる「鋤鼻器(じょびき)」もあります。
  • 体温:体温は37〜38℃と高く、筋肉も多いため、暑くてじめじめした気候では熱中症になりやすい動物です。
緑の山の斜面を背に、長い赤茶色のたてがみをもつウマの頭を横から写した写真。鼻すじに白い模様がある
ウマの顔(目と耳)写真: Basotxerri(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

ウマの種類(品種)

ウマの品種は世界に300以上ありますが、どれも分類では同じウマという種です。気質や体つきから、大きく次の3つに分けられます(「熱い・冷たい」は体温ではなく、気質を表すことばです)。

  • ホットブラッド:アラブ、サラブレッドなど。速さと持久力にすぐれ、敏感です。
  • コールドブラッド:ベルジャン、ペルシュロン、シャイヤーなど、重い荷物を引く力の強いウマ(重種)で、おだやかな性質です。体重が1トンをこえるものもめずらしくありません。
  • ウォームブラッド:両方をかけ合わせてつくられた、トラケナーなど。乗馬や馬術競技によく使われます。

歯とハミ(頭蓋骨を見ると)

おとなのウマの口の前には、草をかみ切るための切歯(前歯)が12本あります。奥には、草をすりつぶす歯(前臼歯と臼歯)が24本ならびます。オスにはふつう、切歯の少し後ろに小さな犬歯が4本あります。5歳ごろのおとなで、歯は全部で36〜44本です。

前歯と奥歯のあいだには、歯の生えていないすき間があります。人がウマに乗るときは、頭に「頭絡(とうらく)」という馬具をつけ、口にくわえさせた「ハミ(銜)」という馬具をこのすき間に置いて、手綱から合図を伝えます。

ウマの歯は、草を食べてすりへるのに合わせて、歯ぐきの中から少しずつ出てきます。そのため、前歯のすりへり方や形から、おおよその年齢が分かります。

黒い背景に置かれた、横向きのウマの頭の骨。細長い顔の先に前歯があり、奥に平たい歯の列がならび、そのあいだがあいている
ウマの頭蓋骨(歯のならび)写真: Anja and M0tty(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

ひづめはどこまでが爪? なぜ蹄鉄をつける?

ウマの脚の先は、人の中指にあたる指1本だけです。人に当てはめると、手足の中指の先だけで立って歩いていることになります。ひづめの中には、人の指先の骨にあたる骨(蹄骨)があり、外側のかたい壁と底は、人の爪と同じケラチンというタンパク質でできています。つまり、外から見えるひづめのかたい部分が、人の「爪」にあたる部分です。

ひづめはのびつづけます。野生のウマのひづめは地面でけずれて、ちょうどよい長さに保たれますが、飼われているウマの多くは、5〜8週間ごとにひづめを切りそろえる必要があります。

ひづめを守るためにつける、U字形の道具が「蹄鉄(ていてつ)」です。飼われているウマは、かたよった餌や尿からできるアンモニア、人や荷物の重さなどで、ひづめが弱くなったりすりへったりしやすいためです。一方、日本の在来馬はひづめがかたく、昔はわらで編んだ「馬沓(うまぐつ)」をはかせていました。

人がひざの上に持ち上げたウマの脚の、ひづめの裏側。U字形のかたい壁にかこまれ、まん中にV字形のもり上がりがある
ひづめを裏から見たところ写真: Alex brollo(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

脚のけがが命にかかわるわけ(なぜ安楽死?)

競走馬などが脚の骨を折り、回復がとてもむずかしいと獣医師が判断すると、薬で安楽死させられることがあります(競馬では「予後不良」と呼びます)。サラブレッドでも体重は400〜600kgほどあり、1本の脚が使えなくなると、ほかの脚に重さがかかりすぎて「蹄葉炎(ていようえん)」などを起こし、立てなくなってしまうことがあるのです。

毛色(何色?)と血液型

ウマを見分けるとき、まず注目されるのが毛の色(毛色)です。日本馬事協会は、栗毛(くりげ)、栃栗毛、鹿毛(かげ)、黒鹿毛、青鹿毛、青毛、芦毛(あしげ)、粕毛、駁毛(ぶちげ)、月毛、河原毛、佐目毛、薄墨毛、白毛の14種類を決めています。家畜のウマでは鹿毛と栗毛がとくに多く、家畜になる前は薄墨毛が多かったと考えられています。

白く見えるウマの多くは「芦毛」で、生まれたときは濃い色をしていて、年をとるにつれて白くなります。顔や脚の白い模様(白斑)や、つむじの位置も1頭ずつちがい、ウマを見分ける手がかりになります。

ウマの血液型には、国際的にみとめられた7つをふくむ8つのグループがあります。組み合わせは約40万通りにもなるため、血液を調べてウマを見分けたり、親子関係を確かめたりできます。

速く走るしくみ(走り方と速さ)

ウマは、敵からすばやく逃げるために、走ることに向いた体をもっています。ウマのなかまは、指の数をへらしながら脚が長くなり、速く走れる体に進化してきました(進化の話は「どこから来た?」の見出しで)。体がじょうぶで、人を背中に乗せて走ることもできます。

ウマの走り方(歩法)には、次の4つの基本があります。

  • 常歩(なみあし):4本の脚を1本ずつ順に地面につける歩き方です。平均で時速6.4kmほどです。
  • 速歩(はやあし):ななめの前脚と後ろ脚をペアにして動かす、2拍子の走り方です。時速13〜19kmほどです。
  • 駈歩(かけあし):3拍子の走り方で、時速19〜24kmほどです。
  • 襲歩(しゅうほ、ギャロップ):全速力で走るときの4拍子の走り方です。平均で時速40〜48kmほどです。2008年には、サラブレッドが約400mを平均時速70.76kmで走った記録があります。

襲歩では、4本の脚がすべて地面からはなれる瞬間があり、このとき脚は体の下に曲げられています。19世紀のアメリカで、写真家のエドワード・マイブリッジが連続写真を撮って、この瞬間があることを確かめました。

12コマの白黒の連続写真。騎手を乗せて走るウマのようすが、黒いシルエットで少しずつ写っている
走るウマの連続写真(1878年)写真: Eadweard Muybridge(Public domain) / Wikimedia Commons

日本の在来馬は、同じ側の前脚と後ろ脚をいっしょに動かす「側対歩(そくたいほ)」で歩くのが特徴とされます。上下のゆれが少なく、山道で荷物を運ぶのに向いた歩き方です。ただし、今の木曽馬のように、側対歩で歩けるウマがいなくなった品種もあります。

サラブレッドとスピードの遺伝子

競馬で走るサラブレッドは、17〜18世紀のイギリスで、アラブ馬などから競走用に改良された品種です。今のサラブレッドはすべて、中東からイギリスへ連れてこられた3頭のオス(バイアリーターク、ダーレーアラビアン、ゴドルフィンアラビアン)までさかのぼれます。

2012年の研究では、短い距離に強いサラブレッドに多い「ミオスタチン遺伝子(MSTN)」の型が、品種ができはじめたころに、イギリス在来の1頭のメスから入ったものだと分かりました。この型は、1954年生まれの種牡馬「ニアークティック」と、その子「ノーザンダンサー」を通じて、最近になって広まったとされます。

ナゾロジーでくわしく全ての「サラブレッドのスピード遺伝子」は1頭の英国ウマに由来している

何を食べる? どう眠る?(草食とくらし)

ウマは草食動物で、牧場の草や干し草を、1日かけて少しずつ食べつづけます。自然の中では、1日に18時間も草を食べてすごすことがあります。体重450kgのウマなら、1日に7〜11kgの餌を食べ、水を38〜45リットル飲みます。

ウマの胃は人と同じく1つで、ウシのような反すうはしません。そのかわり腸がとても長く、大腸の一部の「盲腸」は約1.2mもあります。ここにすむ微生物が、草のかたい繊維(セルロース)を発酵させて分解し、ウマはそれを栄養にしています。

ウマは吐くことができません。そのため、おなかの調子が悪くなると「コリック(疝痛)」というはげしい腹痛になりやすく、これはウマの死因の大きな一つです。

緑の牧草地で、つやのある茶色のウマが頭を下げて草を食べている。遠くにも何頭かのウマが見える
草を食べるウマ写真: Angelo Brathot(Public domain) / Wikimedia Commons

ニンジンは好き?

「ウマはニンジンが好物」とよく言われますが、国によっては「リンゴが好物」「角砂糖が好物」とも言われ、決まった好物があるわけではありません。ウマは、かたくて甘いものを好むとされています。

ニンジンや角砂糖、ハッカ飴(ペパーミントキャンディー)などをおやつにあげる人もいますが、ウマに必要なものではなく、腹痛やのどづまりのおそれもあるため、あげない飼い主も多くいます。

立ったまま寝る?(睡眠時間)

ウマは、立ったままでも、横になっても眠れます。脚には「ステイ・アパラタス」という筋肉・腱・靭帯のしくみがあり、ほとんど筋肉の力を使わずに関節を固定して立っていられるので、立ったまま軽い眠りに入れるのです。

ただし、「レム睡眠」という種類の眠りに入るには、横にならなければなりません。そのため、横になれない状態が続くと、睡眠不足になってしまうことがあります。

ウマは人のようにまとめて眠らず、短い休みを何度もくり返します。1回の眠りはおよそ15分です。飼われているウマの睡眠時間は、平均で1日2.9時間ほどとされます。若いウマほど、よく眠ります。

ウマは、群れでいるほうがよく眠れます。何頭かが眠っているあいだ、ほかのウマが立って見張りをするからです。1頭だけで飼われると、いつも危険を気にしていて、よく眠れません。

砂地の上で、こげ茶色のウマが脚を折りたたんで腹ばいになり、顔をこちらに向けている
横になって休むウマ写真: BLW(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

ナゾロジーでくわしく馬に関する素朴な疑問「立ったまま寝る理由」と「蹄鉄が必要な理由」を解説!

群れのくらし

ウマは群れでくらす動物です。野生のウマや野生化したウマの群れは、2〜25頭ほどの小さな「バンド」に分かれていて、多くはメスとその子どもたちに、オスが1〜5頭加わります。群れを導くのは、オスではなく、強いメスであることが多いとされます。オスは群れのまわりで、敵やほかのオスを追いはらいます。

なかまとは、いななきなどの声や、たがいに毛づくろいをし合う「相互グルーミング」、耳や尾の動きで気持ちを伝えます。両耳をぴったり後ろにふせるのは、痛みや怒りのサインです。

ウマは、ほかの動物におそわれる側の動物です。こわいものに出会うと、まず驚いて逃げようとし、逃げられないときや子どもが危ないときは、かみついたり、けったりして身を守ります。後ろにいる相手もねらって正確にけるため、乗馬では、ウマの後ろに立たないことが最初に教わる注意の一つです。

頭のよさと気持ち(表情・鳴き声・におい)

ウマは、食べものを見つけたり、群れのなかまを見分けたりと、ふだんから頭を使っています。数が4より少なければ「多いか少ないか」を見分けられるという研究もあります。

2024年の研究では、20頭のウマに「止まれ」の合図が出ているときは反応してはいけない、という課題を出すと、20頭とも合図を無視して反応しつづけました。ところが、まちがえると損をするしくみを加えると、まちがいはすぐに減りました。ウマは課題を理解したうえで、損がないうちは「とりあえず全部反応する」作戦をとっていた可能性があります。

2021年の研究では、14頭のウマのほおに、色のついた見える印と、見えない印をつけて、鏡の前に立たせました。すると、見える印をつけたときのほうが、顔をこする時間が長くなりました。ウマが、鏡に映った姿を自分だと分かっている(鏡像自己認識)ことを示す結果と考えられています。

ナゾロジーでくわしくウマは鏡に映った「自分」を認識できる!ウマの個体差によらず「種として」自己認識力をもつ可能性も

表情で気持ちが分かる?

ウマの顔はよく動きます。2015年には、顔の筋肉の動きをもとに、ウマの表情を記録する方法(EquiFACS)が作られました。ウマの顔の動きには、サルのなかまや、イヌ、ネコと共通するものが多くあることも分かりました。

この方法を使った2023年の研究では、餌を待たされてイライラしているときは、白目が多く見えたり餌の容器をかんだりし、餌がもらえずがっかりしたときは、まばたきや舌を見せる動きが多くなることが分かりました。

人の気持ちも読みとる?

ウマはイヌと同じように、人の気持ちを読みとって反応すると、ウマにかかわる人たちのあいだで昔から言われてきました。北海道大学などの研究チームが2018年に発表した研究では、ウマに人の顔写真を見せたあとで声を聞かせると、表情と声の感情が合わないときのほうが、声にすばやく反応しました。ウマが、人の顔と声を結びつけて気持ちを読みとっていることを示す結果です。

2026年の研究では、こわい思いをした人のにおいをかいだウマは、楽しい思いをした人のにおいのときより驚きやすく、人にふれることも少なくなりました。においを通じて、人の気持ちがウマに伝わっている可能性があります。

同じ2026年には、音のないオオカミの映像を見たウマは、ウォンバットの映像のときとちがって心拍数が上がったという研究も発表されました。初めて見る相手でも、姿だけで危険を見分けているようです。

いななきのしくみ(喉鳴りとの関係)

日本語では、ウマが鳴くことを特に「嘶く(いななく)」と言います。動物の鳴き声に専用のことばがあるのはめずらしく、人とウマのつながりが古くから深かったからだと考えられています。

体の大きな哺乳類ほど声は低くなるのがふつうですが、ウマのいななきには1,000ヘルツをこえる高い音が入っています。2026年の研究で、いななきでは約200ヘルツの低い音と高い音が同時に出ていて、低い音は声帯のふるえから、高い音はのどの奥(喉頭)で空気が笛のように鳴ることで生まれていると分かりました。

この研究では、「喉鳴り(喘鳴症)」のあるウマの声も調べられました。喉鳴りは、のどから「ヒューヒュー」という音がする病気で、多くは、のどの神経のまひ(喉頭片麻痺)が原因です。

ナゾロジーでくわしく「ヒヒーン!」馬のいななきの正体は二重音声だった

歯ぐきを見せて笑う?(フレーメン)

ウマが上くちびるをめくり上げて、歯や歯ぐきをむき出しにすることがあります。笑っているように見えますが、これは「フレーメン」という反応で、鼻の奥の鋤鼻器を空気にさらして、においをよく取りこむための動きと考えられています。オスが発情したメスのにおいをかいだときによく見られますが、メスもしますし、レモンのような強いにおいでもします。とくに気持ちと結びついた表情ではありません。

緑の森を背に、灰色がかった茶色のウマが顔を上に向け、上くちびるをめくって歯と歯ぐきをむき出しにしている
御崎馬のフレーメン写真: Koji Ishii(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

寿命と増え方

飼われているウマの寿命は、品種や飼い方、環境によって、25〜30年ほどです。40歳をこえるウマもまれにいて、記録で確かめられたいちばんの長生きは、19世紀のウマ「オールド・ビリー」の62歳です。ポニーでは、2007年に56歳で死んだ「シュガーパフ」が、ギネス世界記録で世界一長生きのポニーとされていました。

メスは春から秋にかけて、19〜22日ごとに発情をくり返し、冬にはふつう発情しません。妊娠期間は約11か月(平均340日ほど)と長く、ふつう1頭の子を産みます。ふたごはまれです。子どもは春に生まれることが多く、生まれてまもなく立ち上がって、走ることもできます。

飼われているウマの子は、生後4〜7か月ごろに乳ばなれします。オスは1歳半ほどで子をつくれる体になることもありますが、飼われているウマは、ふつう3歳になるまで繁殖させません。4歳でおとなとされ、骨格は6歳ごろまで成長を続けます。

草の斜面で、明るい茶色の母ウマと、細い脚の子ウマが顔を寄せ合っている。後ろには森が広がっている
御崎馬の親子写真: Koji Ishii(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

母親といっしょにすごす時間は、子どもの脳の成長にもかかわっています。2026年に発表された研究では、母親と長くいっしょにいた子ウマのほうが、なかまとのかかわりや体の調子を整える働きにかかわる脳の部分(扁桃体や視床下部など)の成熟が進み、なかまとつきあう力も高くなっていました。

ナゾロジーでくわしく「親と一緒は想像以上に重要」母親から引き離した仔馬は脳の配線が悪化すると判明

ウマはどこから来た?(進化と家畜化)

ウマのなかま(ウマ科)は化石がたくさん見つかっていて、進化の道すじがよく分かっている動物です。初期のウマ科の動物として知られるのが、4500万〜5500万年前の北アメリカにいた「エオヒップス」です(以前は「ヒラコテリウム」と同じなかまとされていました)。キツネほどの大きさで、森でやわらかい植物を食べていました。前脚には4本、後ろ脚には3本の指がありました。

その後、ウマのなかまは指の数をへらしながら脚が長くなり、歯もかたい草を食べる形に変わって、森で葉を食べる動物から、草原で草を食べる動物になりました。約500万年前には今のウマにつながるウマ属(エクウス)が現れ、北アメリカからユーラシアなどへ広がりました。

ところが北アメリカのウマは、1万年前から7600年前のあいだに絶滅してしまいました。今、北アメリカにいる野生化したウマ(ムスタングなど)は、16世紀以降にヨーロッパの人びとが持ちこんだウマの子孫です。

家畜になったのはいつ? どこ?(どこの国から来た?)

人がウマを飼っていた古い証拠とされるものが、約5500年前の中央アジア(今のカザフスタン)の「ボタイ文化」の遺跡で見つかっています。土器に残ったウマの乳のあとや、ハミをつけたとみられる歯のすりへりなどですが、とくにハミについては異論もあります。ところが、古いウマのゲノムを調べると、ボタイのウマは、今の家畜のウマの祖先ではありませんでした。

2021年に発表された、273頭分の古いウマのゲノムを調べた研究で、今の家畜のウマのふるさとは、西ユーラシアの草原地帯(ステップ)、とくにボルガ川とドン川の下流のあたりだと分かりました。このウマたちは、紀元前2000年ごろから、スポークのついた車輪の戦車などとともにユーラシアじゅうへ広がり、各地のほかのウマとほとんど入れかわりました。人がウマを乗りこなす中で、体の動きや行動にかかわる遺伝子(GSDMC、ZFPM1)が強く選ばれてきたことも分かりました。

人がいつからウマに乗りはじめたのかは、まだはっきりしません。2023年の研究では、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリーの墳墓(クルガン)から見つかった、紀元前3021〜2501年ごろの「ヤムナ文化」の5人の骨に、ウマに乗ることでできる変化があると報告されました。これまでに見つかった中で、もっとも古い「ウマに乗った人」とされています。

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野生のウマはいる?(モウコノウマ)

本当の野生のウマとは、一度も家畜にされたことのない祖先をもつウマのことです。今「野生のウマ」と呼ばれているものの多くは、家畜のウマが逃げ出したり放されたりして、野生でくらすようになった子孫(野生化したウマ)です。宮崎県の都井岬にすむ御崎馬も、半野生でくらしていますが、もとは飼われていたウマの子孫です。

記録に残る時代まで生きのびた野生のウマは、ヨーロッパなどの「ターパン」(1909年に絶滅)と、アジアの「モウコノウマ」の2つだけです。

モウコノウマ(プシバルスキーウマ、タヒ)は、家畜のウマよりずんぐりして脚が短く、体高は122〜142cmほど、短いたてがみがいつも立っています。染色体の数も33対で、家畜のウマ(32対)とはちがいます。野生では1969年を最後に見られなくなりましたが、動物園に残ったウマから数をふやし、1992年からモンゴルの草原に戻されています。IUCNのレッドリストでは、2011年に「絶滅危惧種(EN)」に見直されました。

土の地面に立つ、淡い茶色の体で脚とたてがみが黒っぽいウマを、横から写した写真
モウコノウマ写真: Jeffery J. Nichols(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

モウコノウマは長く「唯一残った本当の野生のウマ」と考えられてきました。ところが2018年の研究で、ボタイ文化の遺跡のウマのゲノムを調べたところ、今のモウコノウマは、ボタイで飼われていたウマが野生化した子孫だという結果が出ました。一方で、2021年にはこれに反対する研究者も出ていて、モウコノウマが一度も家畜にされたことのない野生のウマなのかどうかは、まだ決着していません。

今いるモウコノウマは、ごく少ない祖先から増えたため、遺伝子の多様性が低いことが心配されています。2020年には、1975年生まれのオス「クポロヴィッチ」の冷凍保存されていた細胞から、初めてのモウコノウマのクローン「カート」が生まれました。日本では、多摩動物公園とよこはま動物園ズーラシアで飼育されています(2024年の時点)。

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シマウマとロバ(ウマのなかま)

シマウマは、アフリカの東部や南部にすむウマ属の動物で、サバンナシマウマ、ヤマシマウマ、グレビーシマウマの3種がいます。名前は「シマのあるウマ」ですが、系統ではウマよりもロバに近いなかまです。縞模様は1頭ずつちがい、親から子へ受けつがれます。皮ふの色は黒です。

低い草むらの前の地面に、白黒のはっきりした縞模様のシマウマが、左を向いて立っている
サバンナシマウマ写真: Yathin S Krishnappa(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

縞模様が何の役に立つのかは昔から議論されてきましたが、今もっとも証拠が多いのは「血を吸うアブなどを寄せつけない」という説です。2019年の研究では、アブはシマウマに近づいても、うまく速度を落とせずにとまりそこね、縞模様の布をかぶせたウマにもとまりにくいことが確かめられました。

2020年の研究では、チェック柄の布でもアブがとまりにくいことが分かり、「平行な縞が動きの錯覚を起こす」という説明は否定されました。2023年の研究では、白黒の差が大きい細い縞が、アブの好む大きな黒い部分をなくしているためだと考えられています。ただし、ほかのアフリカの草食動物に縞がない理由など、なぞも残っています。

ナゾロジーでくわしくシマウマはなぜ縞模様なのか?仮説の1つ「アブ避け」効果を検証!

シマウマは、ウマやロバとちがい、完全に家畜にされたことはありません。アフリカで多くの大型の捕食者(初期の人類もふくむ)におそわれながら進化し、気があらくなったため、家畜にしにくかったという考えもあります。

ロバは、5000〜7000年前にアフリカで、アフリカノロバを家畜にした動物です。オスのロバとメスのウマの子が「ラバ」ですが、こうした雑種はふつう子どもをつくれません。約4500年前のシリアやメソポタミアでは、家畜のロバと野生のシリアノロバをかけ合わせた「クンガ」が使われていて、人がつくった雑種の動物として、知られている中でもっとも古い例です。

日本の馬と人とのかかわり

大陸と地続きだった氷河期の日本列島には、モウコノウマをふくむウマ属の動物がいましたが、その後絶滅し、3世紀の日本のようすを書いた『魏志倭人伝』にも「牛や馬がいない」と書かれています。家畜のウマは、古墳時代の4世紀の終わりごろから、朝鮮半島を通って九州北部に運ばれてきました。5世紀の初めには馬の形をした埴輪(馬形埴輪)が現れ、5世紀の後半には、各地の遺跡から馬具などが見つかるようになります。

日本在来馬(道産子・木曽馬・御崎馬など)

西洋などの外国のウマとほとんど交雑せずに残ってきた日本の馬を「日本在来馬」と呼びます。今残っているのは、北海道和種(道産子)、木曽馬、野間馬、対州馬、御崎馬、トカラ馬、宮古馬、与那国馬の8品種です。DNAの研究では、モンゴルの在来の家畜馬が対馬を通って日本に入り、全国に広がったと考えられています。

在来馬は、ずんぐりした体とゆたかなたてがみや尾をもつ、ポニーに分類される大きさのウマで、粗食にたえ、坂道を歩くのも得意です。明治時代以降、軍馬を大きくするために西洋のウマとのかけ合わせが進められ、南部馬などの中・大型の在来馬の多くは絶滅しました。北海道和種をのぞくと数はとても少なく、2024年には8品種あわせて1,612頭でした。

  • 北海道和種(道産子):本州から持ちこまれた南部馬が祖先とされます。体高125〜135cmほどと在来馬の中では大きく、力の強い品種です。
  • 木曽馬:長野県の木曽地域を中心に飼われている、本州にただ一つ残る在来馬です。一時は絶滅しかけましたが、保存の取り組みで数をふやし、2019年には木曽地域で138頭が飼われていました。
  • 御崎馬:宮崎県串間市の都井岬で、300年以上、ほとんど人の手をかけない放牧でくらしてきたウマです。半野生でくらしていて、国の天然記念物です。体高130cm前後、体重300kg前後で、2020年の終わりには110頭がいました。
  • 与那国馬:沖縄県の与那国島で飼われてきた、体高110〜120cmほどの小さなウマです。1975年には59頭までへりましたが、保存の活動で、2018年には約130頭にふえました。

都井岬では、半野生でくらす御崎馬を見ることができます。人から餌はもらわず、自分で草を食べてくらしているので、さわったり、餌をあげたり、後ろに立ったりしないよう注意が必要です。

乗り物・はたらき手としてのウマ

ウマは、エンジンが発明されるまでの長いあいだ、人にとってもっとも一般的な陸の乗り物であり、荷物を運ぶ手段でした。人は背中に鞍(くら)をのせて乗り、馬車を引かせ、畑を耕させ、戦いにも使いました。ウマの骨を調べた研究では、中世のイングランドのウマは、その前後の時代とくらべて小柄だったことも分かっています。

日本でも1950年には農業に使うウマだけで100万頭をこえていましたが、機械化が進み、1975年には4万2000頭にまでへりました。今のウマは、競馬や乗馬、警察の騎馬隊、障害のある人の乗馬療法などで活躍しています。

ウマからは、さまざまなものも得られてきました。モンゴルなどでは、ウマの乳から馬乳酒がつくられ、尾の毛はバイオリンなどの弓に使われます。馬肉は「桜肉(さくらにく)」とも呼ばれます。赤身の肉が空気にふれると桜色になることが、名前の由来とされています。

「ウマ」という呼び名は、奈良時代ごろまでは「ウマ」と発音され、平安時代の終わりごろ(院政期)には「ムマ」と発音されるようになりました。十二支の「午(うま)」も、ウマを表しています。

よくある疑問

ウマは何類? 何科? 何目?
ウマは哺乳類です。分類では奇蹄目(ウマ目)のウマ科ウマ属に入ります。同じ奇蹄目には、サイやバクのなかまがいます。ウマ属には、ウマのほかに、ロバやシマウマのなかまがふくまれます。
ウマの寿命は? 何年生きる?
飼われているウマは、品種や飼い方、環境によって、25〜30年ほど生きます。40歳をこえるウマもまれにいて、記録で確かめられたいちばんの長生きは、19世紀のウマ「オールド・ビリー」の62歳です。
ウマは立ったまま寝るの? 睡眠時間は?
立ったままでも、横になっても眠れます。脚の関節を固定する「ステイ・アパラタス」というしくみで、立ったまま軽く眠れるのです。ただし、レム睡眠に入るには横になる必要があります。眠りは短く、飼われているウマで平均1日2.9時間ほど、1回の眠りはおよそ15分です。
ウマはどれくらい速く走れる? なぜ速いの?
全速力の走り方(襲歩、ギャロップ)では平均で時速40〜48kmほどです。2008年には、サラブレッドが約400mを平均時速70.76kmで走った記録があります。ウマは、敵から逃げるために、長い脚と1本指のひづめをもつ、走ることに向いた体に進化してきました。
ウマはなぜ人を乗せられるの?
ウマは体がじょうぶで、人を背中に乗せて走ることができます。また、古いウマのゲノムの研究で、人がウマを乗りこなすようになる中で、体の動きや行動にかかわる遺伝子が強く選ばれてきたことが分かっています。それでも、鞍などの馬具なしで乗りこなすには、たくさんの練習が必要です。
ウマは何を食べる? ニンジンが好きなの?
草食で、牧場の草や干し草を1日かけて少しずつ食べます。体重450kgのウマで、1日に7〜11kgの餌を食べます。「ニンジンが好物」とよく言われますが、国によってはリンゴや角砂糖が好物と言われ、かたくて甘いものを好むとされます。おやつは、ウマに必要なものではありません。
野生のウマはいるの?
一度も家畜にされたことのない「本当の野生のウマ」は、ほとんどいません。今「野生のウマ」と呼ばれるものの多くは、家畜のウマが野生化した子孫です。モンゴルなどのモウコノウマは、唯一残った野生のウマと考えられてきましたが、大昔に飼われていたウマの子孫だという研究もあり、まだ決着していません。
ウマのひづめはどこまでが爪? なぜ蹄鉄をつけるの?
ひづめの外側のかたい壁と底は、人の爪と同じケラチンでできていて、中には人の指先の骨にあたる骨があります。ウマは、中指1本の先で立っているのです。飼われているウマはひづめが弱くなったり、すりへったりしやすいため、U字形の蹄鉄をつけて守ります。

ナゾロジーで読む32本

  1. 01 捕食者を見た馬、ポーカーフェイスを保つが”内心ドキドキ”だった
  2. 02 「ヒヒーン!」馬のいななきの正体は二重音声だった
  3. 03 馬は人間の「恐怖のにおい」を嗅ぎ分けられる
  4. 04 「親と一緒は想像以上に重要」母親から引き離した仔馬は脳の配線が悪化すると判明
  5. 05 草しか食べないのに馬は筋肉マッチョ! その理由は草食動物の真のエサにあった?

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参考文献

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表紙の写真: Mikel Ortega(加工: Richard Bartz)(CC BY-SA 2.0) / Wikimedia Commons
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この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。