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Credit: Marc Miskin, Penn
technology

塩粒サイズの「自律型ロボット」の開発に成功

2025.12.17 17:00:53 Wednesday

塩粒ほどの小さなロボットが、自律的に環境を感知し、水中を泳ぐ。

そんなSFのような存在が、ついに現実のものとなりました。

米ペンシルベニア大学(UPenn)とミシガン大学(University of Michigan)の研究チームは、世界最小となる完全自律型・プログラム可能なマイクロロボットの開発に成功したと発表しました。

このロボットは肉眼ではほとんど見えないサイズでありながら、光をエネルギー源として数カ月間動作し、周囲の温度を感知して行動を変えることができます。

しかも製造コストは、1台あたりわずか1ペニー(約1〜2円)です。

この成果は、ロボット工学が長年越えられなかった「サブミリメートルの壁」を打ち破るものとして、大きな注目を集めています。

研究の詳細は2025年7月15日付で科学雑誌『PNAS』に掲載されました。

Dancing robot is the size of a grain of salt https://www.popsci.com/technology/dancing-robot-salt-grain/ Penn and Michigan Create World’s Smallest Programmable, Autonomous Robots https://www.seas.upenn.edu/stories/penn-and-umich-create-worlds-smallest-programmable-autonomous-robots/
Electrokinetic propulsion for electronically integrated microscopic robots https://doi.org/10.1073/pnas.2500526122

なぜ「塩粒サイズ」は40年間も不可能だったのか

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開発された極小ロボット/ Credit: Marc Miskin, Penn

このロボットの大きさは、約200×300×50マイクロメートル。

塩の粒よりも小さく、多くの微生物と同じスケールで動作します。

電子機器はここ数十年で急速に小型化してきましたが、ロボットはそう簡単には縮みませんでした。

その最大の理由は、物理法則がスケールによって激変するからです。

人間サイズの世界では、重力や慣性が運動を支配しています。

しかし、サイズが極端に小さくなると、粘性や抗力といった「表面積に関係する力」が圧倒的に強くなります。

ペンシルベニア大学のマーク・ミスキン(Marc Miskin)准教授は、この状況を「水を押す感覚が、タールの中を進むようなものになる」と表現しています。

そのため、脚や腕のような機構はマイクロスケールでは壊れやすく、製作も困難です。

この問題が、1ミリメートル未満で自律的に動くロボットを作れない理由として、40年以上にわたり研究者を悩ませてきました。

研究チームが選んだ解決策は、「無理に動かす」のではなく、微小世界の物理に適応することでした。

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