鼻から脳へ届く点鼻薬型の抗うつ薬を開発
うつ病において通常の薬物治療の効果がない人々の割合は30%に達すると言われています。
しかし、そのような難治性うつ病であっても、頭蓋骨に穴を開けて、脳に直接抗うつ薬を届けると、目覚ましい効果を発揮する場合があります。
ただ、頭蓋骨に穴を開けることに少なくないリスクが存在します。
そこで今回、東京理科大学の研究者たちは鼻の粘膜の98%を占める部分(呼吸上皮)をターゲットにした、新たな点鼻薬型の抗うつ薬を開発することにしました。
鼻と脳の神経の間には、薬の送達を妨害する障壁(脳関門)が存在しないため、薬の成分を直接届けることが可能になります。
点鼻薬にする候補として選ばれたのは、グルカゴン(GLP-2)と呼ばれる神経ペプチドです。
GLP-2を脳内に投与すると、通常の抗うつ薬では効果がなかった難治性うつ病患者であっても、治療効果が得られることが知られています。
ただ残念なことに、GLP-2をそのまま鼻粘膜に投与しても、大きな効果は得られません。
原因はGLP-2が鼻粘膜から吸収されにくく、また吸収されたとしても細胞内で分解されてしまうためでした。
そこで東京理科大学の研究者たちはGLP-2に細胞への浸透性を高める「剣(細胞透過性ペプチド)」と分解を防ぐ「盾(浸透加速配列)」を与えた新薬を開発します。
問題は、効果を確かめる方法でした。
抗うつ病薬の効果を確かめるにはまず、うつ状態の動物が必要だからです。