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マウスの「うつ状態を20分で治す点鼻薬」が開発される

2021.11.16 Tuesday

未来の抗うつ薬は点鼻薬が主力かもしれません。

日本の東京理科大で行われた研究によれば、改良された抗うつ剤を点鼻薬でマウスに投与したところ、うつ状態がわずか20分で解消された可能性がある、とのこと。

研究で用いられた抗うつ薬は本来、脳内に直接投与するタイプのものでしたが、改良によって鼻粘膜への投与でも同じ効果を得られるようになったようです。

研究内容の詳細は『Journal of Controlled Release』に掲載されています。

On the Nose: Scientists Optimize Intranasal Anti-Depressant Drug Delivery to the Brain https://www.tus.ac.jp/en/mediarelations/archive/20211111_8305.html
Usefulness of cell-penetrating peptides and penetration accelerating sequence for nose-to-brain delivery of glucagon-like peptide-2 https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0168365921002947?via%3Dihub

鼻から脳へ届く点鼻薬型の抗うつ薬を開発

鼻から脳へ届く点鼻薬型の抗うつ薬を開発
鼻から脳へ届く点鼻薬型の抗うつ薬を開発 / Credirt:東京理科大学

うつ病において通常の薬物治療の効果がない人々の割合は30%に達すると言われています。

しかし、そのような難治性うつ病であっても、頭蓋骨に穴を開けて、に直接抗うつ薬を届けると、目覚ましい効果を発揮する場合があります。

ただ、頭蓋骨に穴を開けることに少なくないリスクが存在します。

そこで今回、東京理科大学の研究者たちは鼻の粘膜の98%を占める部分(呼吸上皮)をターゲットにした、新たな点鼻薬型の抗うつ薬を開発することにしました。

鼻と脳の神経の間には、薬の送達を妨害する障壁(脳関門)が存在しないため、薬の成分を直接届けることが可能になります。

点鼻薬にする候補として選ばれたのは、グルカゴン(GLP-2)と呼ばれる神経ペプチドです。

GLP-2を脳内に投与すると、通常の抗うつ薬では効果がなかった難治性うつ病患者であっても、治療効果が得られることが知られています。

ただ残念なことに、GLP-2をそのまま鼻粘膜に投与しても、大きな効果は得られません。

原因はGLP-2が鼻粘膜から吸収されにくく、また吸収されたとしても細胞内で分解されてしまうためでした。

そこで東京理科大学の研究者たちはGLP-2に細胞への浸透性を高める「剣(細胞透過性ペプチド)」と分解を防ぐ「盾(浸透加速配列)」を与えた新薬を開発します。

問題は、効果を確かめる方法でした。

抗うつ病薬の効果を確かめるにはまず、うつ状態の動物が必要だからです。

次ページ水責めでマウスを強制的に「うつ状態」にする

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