道具の練習で言語能力が上がり言語の練習で道具の扱いが上手くなる
一方の練習によって神経回路の強化を行えば、他方のスキルも改善するか?
謎を解くため研究者たちは被験者を集め、言語テストの合間に、30cmもの大きなペンチで鍵型のクギ(方向性がある)を板から引き抜き、別の穴に差し込むという高い道具スキルを要する作業と、道具を使わず手を使って鍵型のクギを穴に差し込む簡単な作業をやってもらいました。
結果、道具を使って作業を行った場合はその後の言語テストの成績が30%伸びたものの、手を使ってしまった場合、成績の伸びは15%に留まりました。
道具の使用で大脳基底核の脳回路が効率的に動くようになり、結果として同じ脳回路の働きに依存する言語能力が上がったと研究者たちは結論付けました。
さらに今度は逆に、道具使用の合間に、複雑な構文を学習した場合と簡単な構文を学習した場合が比較されました。
するとこちらは複雑な構文を学習した後に、より道具スキルの上達が起きました。
以上の結果は、言語能力と道具スキルが同じ大脳基底核にある神経回路に依存しており、一方の練習で神経回路を強化すれば、他方の能力も上昇することを示します。
一流の数学者が一流のバイオリニストであったり、プロの運動選手が外語大の学生よりも巧みに英語を話せたりと、ある分野に熟達している人が別の分野でも高い技能をもつことが現実の世界でも知られています。
このような一芸が多芸に通じるのも、多芸の根元が本業と同じ脳回路を使っているから可能なのかもしれません。