人体にノーダメージの「遠紫外線(Far-UVC)」とは?
殺菌を目的に紫外線を利用することは、とりたてて新しい技術ではありません。
キーボードやスリッパの除菌など、現在でもあらゆるシーンで使われています。
しかし一方で、殺菌に使われる紫外線(UVC)は、眼疾患や皮膚がんを引き起こすリスクがあり、人のいない場所で使用する必要がありました。
これに対し、新たな「遠紫外線(Far-UVC)」は、人体を傷つけることがありません。
そもそも光は、波長の違いによって、さまざまな種類に分けられます。
このうち、私たちの目に見えるものが「可視光線」ですが、これより波長の短いものが「紫外線」です。
紫外線は、波長の長い方からUVA、UVB、UVCに分類されます。
この中で最も殺菌力の強いのがUVCであり、長い間、病院や工場、浄水場などの施設で利用されてきました。
しかし、人体へのダメージが大きいのも事実でした。
ところが、UVCの範囲内でとくに波長の短い「遠紫外線(Far-UVC)」なら、皮膚がんなどの発症を起こさず人体に対して無害であると報告されています。
波長は207~222ナノメートルを指し、生体内のごく短い距離しか通過できないため、皮膚表面の細胞や、目を覆う涙の層すら通り抜けられません。このためDNAを損傷させてがんを発症させる恐れがないのです。
それでいて、表面についた細菌やウイルスの不活性化には効果的です。
研究チームは今回、遠紫外線(Far-UVC)」が室内を浮遊する細菌・ウイルスに対し、どれほどの殺菌効果をもつか実験しました。